北京では、黄桃の缶詰が売り切れて
店から姿を消す事態に
買い占め関連の話題で注目を集めたのが、北京で黄桃の缶詰が売り切れ状態になったことだった。スーパーのカットフルーツ缶詰の棚に並ぶ商品のうち、なぜか黄桃の棚だけがどこも空っぽになっているというのである。職員は黄桃缶詰の売り切れに落胆を隠せない客に対して、「ミックスフルーツはいかが? ミックスフルーツにもカット黄桃が入っていますよ」と声をかけたという。
もちろん、黄桃が特に風邪に効く、さらには新型コロナに効くという話は聞いたことがない。「黄桃缶詰売り切れ」ムードにあおられてスーパーに行った誰もが空になった商品棚を前に首をひねっていたときに、ネットの書き込みがその答えをくれた。
きっかけとなったのは中国東北地方のあるスーパーが黄桃の缶詰の売り出しに「桃でコロナから逃げる」というキャッチコピーを付けたところ、飛ぶように売れたことだったという。中国語の「桃」と「逃」は発音が同じで、それにひっかけたのが大当たりしたというのが真相らしい。まぁ、中国ではよくある販促プロモーションである。
ただ、別の書き込みによると、東北地方出身者にとって黄桃は、子どもの頃、風邪を引いて熱を出し、寝込んだときには親が特別に食べさせてくれたという思い出があるという。療養効果がないのは分かっているが、子ども心にはひんやりと冷たくて、甘く、喉越しの良い黄桃が、熱を冷まし、元気にしてくれるような「心の薬」だったというのである。「黄桃の缶詰は子どもたちの精神のよりどころだった」と書かれていた。
それもあり、東北出身者が多く暮らす北京に黄桃缶詰ブームが飛び火した。「妙な漢方製剤を買い込むよりも、黄桃の缶詰を買い込んだほうが何倍も心が安らぐ」というネットの書き込みも目にした。