『Jリーグ引き分け廃止戦略』で
日本は飛躍的に強くなる

 私の提言は、「サッカーJリーグのリーグ戦において引き分けを廃止して“PK戦決着制”を導入する」ことです。

 ここで、2022年11月時点のJ1リーグの状況を改めて分析してみましょう。18チームおのおのが34試合を行い、合計306試合のうち勝敗がついた試合が209試合、引き分けが97試合です。つまり、全体の3割強の試合は“引き分けの勝ち点1”で決着しています。

 仮に、このすべての引き分け試合を延長戦は行わずにPK戦で決着させたらどうなるでしょう。勝ち点ルールを変更して、90分間での勝利は3点、敗北は0点、さらに引き分け後のPK戦勝利は勝ち点2、敗北は勝ち点1とするイメージです。そうなるとPK戦がJリーグの順位を左右する重要な要素となります。場合によってはPK戦が優勝を決めたり、降格を決めたりするケースも出てくるでしょう。

 競争優位というものは、累積経験量で決まります。他の国のリーグ戦ではPKを蹴る機会が極端に少ない中、JリーグだけPK戦決着制を導入したとしましょう。単純計算で年間100試合程度のPK戦が行われ、各試合で10人のキッカーがガチのPK勝負を経験することになります。年間延べ1000人が真剣勝負のPK戦を経験する計算です。

 メンタルが日本代表のPK力向上の鍵とすれば、そのメンタルを鍛える場がここで誕生します。

 PK戦が重要事項になれば、GK(ゴールキーパー)の起用についても進化が起きます。サッカー日本代表の正GKはシュートを止めるのがうまい選手よりも、守備陣の指揮がうまい選手の方が重要です。シュートを打たせないことの重要性が高いのです。

 でも、2026年以降は延長線後半に限ってはPKを止めるのがうまいGKへの交代を検討したほうがいいかもしれません。もしPK戦決着制が定着すればJリーガーの中でPK特化の尺度で見た場合、誰が一番うまいGKかもわかるようになります。

 重要なことは、この制度の下で18チームの監督がそれぞれ真剣にPK戦の戦術を考え始め、ひとりひとりの選手が無数の発見をして、Jリーグ全体のPK戦のノウハウが技術、メンタルともに大幅に底上げされることです。

 それを技術委員会が吸い上げれば、A代表の大半が当面は欧州組という現実があってもそのノウハウは移転できるはず。さらに言えば2030年大会以降においてはガチPK戦世代がサッカー日本代表の中心になるでしょう。

 現実には、たとえこのようなことを考えたとしてもFIFAがJリーグに対して「引き分け制の廃止提案」をどう裁断するかという問題があるのかもしれません。

 その程度のこともわかっていない業界素人の戦略コンサルタントの提言ですが、それでもこのような外部の提案に、日本のサッカー界は耳を傾けていただけないでしょうか。村井チェアマンが退任して以来、私もサッカー界には知り合いはひとりもいない立場ですが、一サポーターとして真剣にこんなことを考えてみました。