その共通点とは「自分の気づきをメモしておく」ということと、「メモを書きながら考える」ということです。
そして、なにより、ノートやメモは、知的生産力をアップする強力な武器になるという確信が芽生え始めました。
考える力がある人のノートは、どうなっているのか?
そこで再び、仕事の現場で働いている人がどのようにノートを使っているのか、もう少し調べてみようと思いました。
ただ、漫然と調べるのではなく、「仕事ができる人」「考える力があると思う人」にフォーカスして、どうやって知的生産活動をしているのかを探ろうとしました。
そうすると先ほどのノート術やメモ術の共通点と同じような、いくつかの傾向が見えてきました。それは、
・小さめのノートを常備して、自分の気づきをすぐにメモして仕事の参考にしている
・大きめのノートに考えを書き出しながら、企画を考えている
という人が結構いたことです。そして何より驚いたことが、
・思ったより、ノート1冊で済ませている人は少ない
という事実でした。
そこで、ある仮説が頭に浮かびました。
「知的生産力を高めるためには、自分の気づきをストックするインプットメモと、実際に企画を考えるアウトプットメモのスキルが必要ではないか」
ということです。
アイデアを出したり、企画を考えたりする知的生産活動のためには、いろいろなアイデアの種や知識の引き出しが必要です。このストックを作るのが「インプットメモ」です。
お笑い芸人がネタ帳をつくることや、小説家や漫画家が作品の世界観をイメージするために様々な取材をしてノートに書きとめておくのが、インプットメモという意味合いです。
ところが、私たちビジネスパーソンの中に、普段からアイデアの種になることを、それ専用のノートをつくってコツコツをストックしている人は、それほど多くありません。このインプットメモを地道に取り続けることが、知的生産力を高めるためにとても有効なわけです。
そうして、いざ実際の企画やアイデアを考えようとするときに、考えうる課題や参考になる事例など、さまざまな情報を紙の上に書き出しながら考える。これが「アウトプットメモ」というわけです。
これは、会議のディスカッションをするとき、ホワイトボードに皆の意見を全部書きながら進めるのと同じです。ある意味、一人会議である「発想」という行為をメモを書きながら進めていくということです。
大前研一氏は企画を考えるときに、読めないくらい汚い字で、それでもスピーディにいろいろ書きなぐりながら発想を広げていたといいます。コクヨの社長も、経営会議でよくA3サイズのノートパッドを使っています。提案者の発言を聞きつつ、そのノートパッドに自分の考えを書き広げてから、アドバイスや指示を出しています。