第二に竹島に関する記述である。

 中央日報は「『竹島は日本固有の領土』強まる日本の主張…韓国政府『即刻削除を』」とする記事で詳細に論じている。

 第三に、2027年には日本の防衛予算はGDP比2%となり、その額は現在の世界第9位から3位に高まるとする点である。

 朝鮮日報は、2027年には日本が防衛費を今の2倍の10兆~11兆円に増大させ、米・中に次いで世界第3位の防衛費支出国になる、と報じた。また、日本は米・英・豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」に参加するとの見方も出ている、とも伝えている。

 さらに米国からのトマホーク購入、自国製ミサイルの射程を1000kmに延ばすと同時に敵国の軍事施設をピンポイントで攻撃するため24時間の衛星監視体制も持つことになることなど、日本の防衛力強化について伝えている。

 ただ、これらについては事実を淡々と伝えており、賛否についてのコメントはしていない。

 ハンギョレ新聞は、日本の防衛予算が世界第3位となり、日本の安全保障政策の大転換で、朝鮮半島を含む東アジアに相当な影響を与えるものとみられると警戒感を強めている。

尹錫悦政権の対日安保認識は
日韓関係改善の重要なステップ

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 元朝鮮半島出身労働者(元徴用工)問題の解決など、日韓関係に横たわる懸案問題の解決の見通しはいまだ立たない。しかし、東アジアの地域情勢に鑑み、日米韓の防衛協力体制の強化は待ったなしの状況である。

 尹錫悦政権が実質的に日本の安保3文書の改定を黙認したことで、韓国メディアも革新系のハンギョレ新聞などを除いては、比較的冷静な反応を見せている。これは今後の安保協力にとって一歩前進であり、それが進むことで歴史問題解決の機運も韓国国内で高まってくるだろう。

 その意味で日本の安保戦略改定の問題が無風で通過したことは評価すべきだろう。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)