自衛隊は在日米軍基地の警備で
ドローンを事実上、使用できない

 この法律は皇居、官邸、自衛隊と米軍の指定された関係施設、原発、空港などの重要施設においてドローンの飛行を禁じるもので、“これら施設に対するドローンの接近や攻撃”を防止する目的の法律だ。

 自衛隊と米軍の施設では最前線の沖縄県の那覇駐屯地、宮古島駐屯地、与那国駐屯地、日米両主力艦隊の拠点である横須賀基地、佐世保基地、弾薬が眠る各地の弾薬庫、米軍の主力である沖縄の米軍基地などがその対象に指定されている。

 この法律は自衛隊にまで適用され、これら施設管理者の同意を得て、警察に対し48時間前までに飛行について通報をしなければならないのだ。この点について警察庁は取材に対し、「『何人も、対象施設周辺地域の上空において、小型無人機等の飛行を行ってはならない』とされています。自衛官も例外ではありません。また飛行させる場合は都道府県公安委員会等に事前に通報しなければなりません」と即座に回答をした。防衛省報道室も即座に、陸幕報道室は1週間後の回答で、これを認めた。

 つまり48時間前に事前通報しなければ、自衛隊はドローンの飛行ができない。現在、陸自は自爆ドローンの調達を進めつつあるが、このままでは重要施設周辺では自爆ドローンを発射する48時間前に警察に連絡、それ以前に施設管理者の同意を得てからでなければ発射できないことになる。

 そのため、在日米軍基地の警備に出動した自衛隊はドローンが事実上、使用できないことになる。日本に有事が迫り、緊急出動した自衛隊が、ドローンを豊富に使う米軍から「どうしてドローンを使わないのか? 平和安全法制で定められたアセット防護をやる気がないのか?」と批判されることは目に見えている。

 このままでは、日米同盟すら危機になりかねない。

禁止の対象に
無人偵察機スキャンイーグルも

 また陸幕および防衛省報道室は、こうした禁止の対象には固定翼で比較的大型の無人偵察機スキャンイーグルなども含まれると示唆した。これは複数の自衛隊幹部も証言している。

 これが何を意味するのか? たとえば台湾情勢が悪化しつつある際に陸自が日本最西端の与那国駐屯地からスキャンイーグルで偵察させようとしても2日前に通報をしていなければ事実上は不可能ということだ。いくら自衛隊が大型固定翼ドローン「シーガーディアン」などの高価なドローンを買い込んでも、臨機応変な飛行が最前線からできなくては無意味だ。

 他方、防衛省報道室は「災害その他緊急やむを得ない場合においては、飛行開始の直前までに口頭での通報を行うことで足りるとされています」とする。実は彼らはそれまで“です”と断言していたにもかかわらず、ここでは“されています”と急に伝聞調になっている。