例外規定はあるも事実上は機能せず、
災害派遣でも飛行を断念した事例が複数

 実際、筆者が20人近くの自衛官に確認したところ、彼らはそうした緊急処置で飛行したことは皆無ではないがほとんどなく、警察との具体的な飛行に関する取り決めもないと証言した。あまつさえ、災害時に事前通報ができないとしてドローンの飛行を断念した場合も複数あるとも語った。

 手続き上は可能と言い張っても、それが使用者に負担を強いることで機能しないのならば、その制度設計そのものに無理があり、見直すべきなのだ。

 また陸自がドローンを使って先述の重要な日米両軍の基地や弾薬庫を警備しようにも48時間前に通報しなければならず、事実上、ドローンは使えない。大量に買い込んだドローンを保管庫でほこりをかぶらせたまま、自衛官が目視で出動することになりかねない。

事前通報書には
機微な情報を満載してFAXで送信

 しかも、この通報書自体も問題だ。この警察への事前通報では、操縦者の氏名、生年月日、住所および電話番号を記載しなければならない。これは駐屯地の警備部隊や特殊作戦群といった機微な部隊のドローン担当者の氏名・住所・電話番号が外部に流出するリスクを増やしているとある幹部は危惧する。

 確かに日本の警察が世界屈指の優秀さであっても、こうした機微な情報を自衛官が警察に持ち込んだり、FAXやメールで送信したりすることはハッキングなどによる流出のリスクを高めている。もしも中国やロシアなどの工作員が入手した場合、大変なことになりかねない。

 さらに深刻なのは、このように施設管理者の事前同意と警察への48時間前までの事前通報が自衛隊に強制される一方で、工作員は自衛隊施設へドローンを飛ばし放題になっているということだ。