キャンドルの接し方は千差万別
もっとカジュアルに楽しんでほしい
金指 理事の皆さんそれぞれ、キャンドルとの接し方や楽しみ方は千差万別です。
ロウソクやキャンドルというのは、誕生日や結婚式にお祝いとして灯すこともあれば、人生の終わりに天国へ向かうときの道しるべや、三途の川を渡るときの明かりとして灯すという習慣もあります。
そういった、ゆりかごから墓場までと言いますか、人の人生の節目節目で灯すことのみならず、もっとカジュアルに「灯すこと」を楽しんでほしいんです。気持ちを穏やかにする、リラックスする、いつもと違った空間演出をする。楽しみ方は無数にあるはずです。
さまざまなバックグラウンドを持ったかたたちに理事に就任していただくことで、キャンドルには多様な楽しみ方があるという、皆さんなりの思いをどんどん広げていってもらえればと思い、お声がけしたというのが経緯です。
――キャンドル制作や資格認定をおもな事業としていた日本キャンドル協会と、アーティストや空間演出家としてキャンドルを扱うキャンドル・ジュンさん、方向性の異なる両者が一緒にキャンドル文化普及のための取り組みを始めたことは意外でした。
キャンドル・ジュン氏(以下、ジュン) 最初に協会を立ち上げたかたとは、もともと面識がありました。「日本キャンドル協会」という日本を代表するキャンドルの協会という団体名だったので、キャンドルにたずさわる人間としては、一言物を申したいという思いは多少ありつつも(笑)、関係性は維持されていました。一方で、金指さんとも17年ほど前から付き合いはありました。
金指 新卒でカメヤマに入社し、当時は営業をしていました。東京に転勤になって、小売店やホテル、イベント会場などに営業して回っていたんですね。でも大きな課題があって、お客さんは購入してくれてもインテリアとして部屋に飾っておくだけで、灯さないんですよ。だから売り場に置いてもらっても減っていかないんです。
このままでは業界は衰退の一途をたどるしかない、かっこいい灯し方をする人を増やしていかなければならない、そう考えていた矢先に、ある雑誌に「キャンドルアーティスト」としてキャンドル・ジュンさんが載っていたんです。かっこいい灯し方をする人がいた! とうれしくなり、メーカーの営業としてではなく、個人としてコンタクトを取ってみたんです。その時は「何しに来たんだ、このおっさん」という目をされましたね(笑)。
ジュン そうでしたっけ……? 全然覚えていないです(笑)。
金指 その後、展示会やイベントの案内をしたり、ジュンさんが実施している「キャンドル・オデッセイ」(争いのあった地でキャンドルを灯す旅)などに顔を出したりと、徐々に付き合いが増えていきました。
ジュン それで、金指さんが協会の代表理事となり、協会の名前に見合う活動をしていきたいということでしたので、それは私の活動にとっても大きな価値になると思い、ぜひ(理事を)やらせてくださいとお返事をしたんです。
キャンドルのつくり手を増やすという意味では、これまでの協会の活動はもちろん意義があったと思います。つくり手が増えて、独立して、また生徒さんたちを抱える。でも資格ビジネスですと、その先が見えなくなってきていた部分がありました。先生たちは自らが競合をどんどんつくっているわけですし、つくり手だけが増えてもいずれは行き詰まります。実際、以前は協会の利益も右肩上がりでしたが、近年は徐々に減ってきています。
また、キャンドルのつくり手が増えたことで、キャンドルを装飾に用いるデコレーターもここ20年ほどでだいぶ増えてきました。そこで新たな問題も出てきたんです。