日本のキャンドル文化を発展させるためには
組織の壁を超えて団結しなければならない
ジュン そうした方々が少しボヤ騒ぎを起こしたりすると、その後、そのイベント会場は火の取り扱いが難しくなったり、キャンドルの装飾がNGになったりするんですね。
そのため、自分がキャンドルを灯したり、キャンドルを使って空間演出をしたりする時に、支障が出始めたんです。自分が切り開いてきた世界を侵され始めた。そこで初めて、キャンドルに関するマナーやルール、安心安全に灯すための知識などを啓蒙することの必要性を感じました。そうしなければ、いずれこの業界ごとつぶれてしまうのでは、という危機感を持ったんです。
それで新体制では、キャンドルをつくるだけでなく、安心安全に灯すこと。そして、キャンドルの灯のゆらぎを通して人々が集い、つながっていく。そうした活動に力を入れていくことにしたんですね。
――これまでハンドメイドやインテリアが中心だった日本のキャンドル文化を、次のステージに押し上げたいということですね。
ジュン そうですね。それぞれの世界観をもってデコレーションをすれば良かったのですが、一方で場所を提供してくれている側としては、「キャンドルを使ったかどうか」という点では同じです。
「キャンドルを使うのは心配」という懸念を一度持たれると、それを払拭するのは至難の業です。それはある意味、儲ける儲けないということよりも、私たちの活動全体にとって死活問題でした。ですので、キャンドルをつくる側も灯す側も、組織を超えた連携が必要だと感じました。
また、必要に応じて消防法などの法律の見直してもらえるよう、働きかける必要があると思っています。現在の消防法は、ひとつの会場で扱っていいのは総燃料30キロまで、といった決まりがあります。これですと、大きなキャンドル1つ置いたら終わりになることもある。でも、小さなティーキャンドルを何百個置くと、それだけ火の数も増えてしまう。明らかに火の数が多いほうが危険なのに、現行の消防法では、単に燃料の重さだけでジャッジされてしまっています。キャンドルの主成分はワックスで、石油やガソリンと同じ燃料に分類されていますが、石油やガソリンと違って、生火を近づけても着火しません。溶けるだけです。こうした、危険とされる判断基準や分類に関して、ルール改正を働きかけていく必要が出てきているんです。これにも多くの業界関係者との連携が必要になってきます。
――2021年から年に一度、東京タワーで「ジャパンキャンドルアーティストアワード」(以下、JCAA)を開催していますね。このイベントでは、たしかに組織を超えた連携を意識している印象です。
金指 キャンドル関連の組織というのは国内に大小10団体ほどありますが、競合するのではなく連携していきたい、そうした思いもJCAAの開催に反映されています。
イベント自体は日本キャンドル協会が主催していますが、ほかの団体にも参加していただいて、組織で競い合うのではなく、アワード形式でそれぞれの生徒さんが技術や発想を競い合う。もちろん、いずれかの団体に所属していない一般の人たちにエントリーしていただくことも可能です。
それまでは、つくる人はつくる人、灯す(デコレーションする)人は灯す人、ロウソクやキャンドルメーカーや関連組織も、活動はバラバラでした。JCAAというイベントを通し、そうしたキャンドルにたずさわる人々に横串を指して、年に一度は皆が集い、コミュニケーションを取ることのできる場になればいいなと思っています。それこそ、日本キャンドル協会という名前に見合うミッションではないでしょうか。
ジュン 「うちが、うちが」と他者を排除していくのではなく、皆で手を取り合って、安心安全にキャンドルの文化を広めていく。それが結果的に皆の利益につながっていくのだと思います。
世の中で大きなアクションを起こすには、やはり膨大な時間がかかります。私としては時間がないと思っているので、日本キャンドル協会の理事としての活動含め、ひとつひとつのアクションすべてが自分の活動につながっていないといけない。そういう意味でも、JCAAは私個人にとっても非常に意義のある活動であると捉えています。
――キャンドルを灯すアーティストとして、そして、キャンドルを使ったデコレーションや空間演出において、キャンドル・ジュンさんは国内における第一人者だと思いますが、初めにキャンドルに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?