最初こそ反発していたが、ビーガンメニューで体の変化を感じたというモモさん。体重も自然と11キロ痩せ、ふさいでいた気持ちも回復して活動的になっていった。しかしビーガンを貫くことは新たなストレスを生んだ。

「楽しいはずのランチや飲み会、デートも何を食べるかわからない。相手に気を使わせるのも嫌で、どんどん外食が苦痛になっていきました。ちょっとしたことでイライラするようになって、友達も減りました」

 モモさんのように心身の変化を感じて、ビーガンをやめる人は少なくない。ハリウッド女優アン・ハサウェイも、自身の結婚式でゲストにビーガンメニューを振る舞うほどの菜食主義を貫いていたが、のちにビーガンだった2年間は「体も心も不調気味だった」と振り返っている。

 モモさんはその後実家を離れ、再就職先で出会った男性と結婚。妊娠を機に少しずつ以前のような「こだわりのない食事」に戻すように努めたという。

「妊娠中も全然体重が増えなかったのでおなかの赤ちゃんの栄養が心配になって、数年ぶりに肉や卵を食べてみたんです。最初は罪悪感でいっぱいでしたが、その日はすごく深く眠れて、これまで自分がどれだけムリをしていたのかと痛感しました」

 今でも、肉や魚を食べることへの罪悪感は続いているという。

ミニマリストな親に反発し
モノをため込む生活に

 親の志向を引き継ぐことなく、大人になったという2世もいる。ミニマリストの親に育てられたという会社員のワタルさん(仮名・42歳)は、壁一面の本棚に少年漫画がぎっしりと並び、趣味のフィギュアやレコードのコレクションにあふれた部屋で生活している。

「母親はモノを家に置くのを異常に嫌がり、リビングにはテレビとテレビ台がポツンと置いてあるだけ。小遣いで買ったおもちゃや漫画は増えすぎると勝手に『整理整頓』されて無くなっていました。ショックだったのは小学4年生の時に友達がくれたバースデーカードが、勝手にゴミ箱に捨てられていたこと。人からもらったものでも、ちゅうちょなく捨てる母親の気持ちは理解できませんでした。幼少期に何度も怒られたのに、今でも片付けることが苦手です」

 ミニマリストという言葉を知った時、やっと母の生き方が少し理解できた。

「親と同じように生活できない自分がおかしいのか、と悩むこともありました。子供にとって親の生き方、考え方は絶対ですから。でも、大切にしていたCDを勝手に捨てられた時に、たとえ親でもライフスタイルを合わせる必要はないと気づいたんです」

 以降、ワタルさんは断捨離を繰り返す親とは正反対の、モノをため込む日々を送っている。

「たまに実家に帰ると、やっぱり落ち着かない。今のワンルームでモノに囲まれた生活が気に入っています」

 親と子の人生はまったくの別物だと気づいたことで、モモさんもワタルさんも新たな自分の生き方を踏み出せたようだ。