完全自動運転は当面不可能、
レベル5→3へ変更の見込み
また、Apple Carは最初のモデルからレベル5の自動運転(原則として、いかなる場所、いかなる状況下でもシステムがすべての運転操作を行う完全自動運転)の実現を目指していたが、2026年の時点でもその達成は困難とみて、他メーカーと同じく、より現実的なレベル3(高速道路上などの限定条件下でシステムがすべての運転操作を行う、条件付き自動運転)へと軌道修正したとされる。それに伴って価格も10万ドル以下に抑えられ、テスラの「Model S」などの高級EVと同等クラスの製品になるものと考えられている。元テスラの技術者によれば「レベル5を実現するには、現実の道路状況の変化が激しすぎる点が問題」とのことなので、メーカー側の努力だけでなく、自動運転のための道路側のインフラ整備なども待つ必要がありそうだ。
Apple Carは過去にもあった?
~ルノーとの協業
実は、車体に正式なアップルロゴをつけた量産車は、過去にも存在した。それは、1996年に発売されたルノーの「Clio Apple」である(動画)。ベースとなったClioは、日本では商標の関係でLuteciaと呼ばれていた。Clio Appleには、Macintosh PowerBook 190cとGSM仕様の携帯電話が付属し、携帯回線ネットワークのカバー範囲内であれば、いつでもどこでもインターネットに接続できるという点が、当時としては画期的だった。
しかしこの試みは、後のモトローラのiTunes内蔵携帯電話、「ROKR」(ロッカー)と同様に、表面的な協業であったといえる。つまり、「自動車や通信の専業メーカーとアップルがコラボレーションしたら、どんな製品ができるのか相手メーカーに考えてもらった」という類のものであり、結果はアップルが望む水準にはなかった。特にClio Appleは、ジョブズ復帰前のアップルが最も低迷していた時期の苦しまぎれに近いプロジェクトだったため、彼が暫定CEOになるやいなや、中止されている。
ちなみにルノーの名誉のために追記するならば、のちに同社はiPodドックを備えた車種をいち早く投入したり、初代iMacが登場するとインテリアにトランスルーセントのパーツを採用したモデルを出すなど、先取精神にあふれた自動車メーカーとして今に至っている。