他社のコンセプトカーに見る
Apple Carのヒント
最後にApple Carのデザインについて考えてみよう。形そのものではなくアプローチの方向性として、マーク・ニューソンが1999年に手がけた「Ford 021C」や、シトロエンの最新EVコンセプト「Oli」などにヒントがありそうだ。
これらのコンセプトモデルのディテールに注目してみると、021Cでは、観音開きのドアと回転するシートで乗降をしやすくしたことに加えて、引き出しのようなスライド式のリアトランクによって荷物へのアクセスも容易になっている。観音開きドアや回転シートは他の量産車でも個別に採用された例があったが、こうした要素を統合的かつミニマリスト的なアプローチでまとめたところに意義があった。
ニューソンは、アップルのデザインディレクターだったジョナサン・アイブとも親しく、Apple Watchのデザインにも協力したことで知られており、今年11月にもフォーブスのインタビューで「自動車のデザインははるかに向上させることができる」と語っている。
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一方、やはり観音開きのドアを持つOliは、同一パーツの左右フロントドア、既存品より80%も部品数を減らしたシート、ハニカム構造のファイバーグラス製で軽量化を図ったパネル類などの採用で製造工程を簡略化しながら車重を1000kgに抑え、40 kWhの小さなバッテリーで400kmの航続距離を実現している。また、多くのリサイクル素材を利用し、垂直のフロントウィンドウによって直射日光がダッシュボードに当たる時間帯を短くすることで室内温度の上昇を抑えるなど、エコロジカルでサステナブルな自動車のあり方を追求した。
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アップルの名を冠する以上、Apple Carのデザインでも、これらに匹敵するラジカルさを備えてほしいというのが、筆者の個人的な願望である。