社会の混沌は次なる火種をも生むか

 上海在住の日本人は「ウィズコロナになった瞬間、感染は恐るべきスピードで拡大し、混乱はますますひどくなっています」と話す。こうした状況に対し、中国の医学界と接点を持つ千葉県のある医師は、「中国の専門家の医学的知識も結局政治に左右されてしまいます」と言い、いきなり正反対の措置を講じる中国政府に疑問を向ける。

 ゼロコロナ政策で規制を強めてもダメ、逆に規制を緩めてもダメ――。中国では政策がもたらす反動が大きく、市民が動揺し翻弄させられるケースは枚挙にいとまがない。

「感染はいずれピークを過ぎれば落ち着く」という見方もある一方で、社会の不安定化は次なる火種をも生む可能性もある。中国生活が長い米系コンサルタントは「中国共産党は天安門事件のような動きを恐れ、今後、数カ月先に再度引き締めに転じるかもしれない」と警告する。

 習氏は混乱を恐れる市民の心理を利用し、政権の正統性をより強調するために、「言わんこっちゃない」とばかりに市民の管理をさらに厳しくする可能性さえある。

「市民が上げた声」は政策転換を促した。確かにそれは、3期目の習政権下の中国を占う意味で前向きなものとなったが、これが“新時代の到来”の扉を開けるものとなるかはまだわからない。