金利が上がると
倒産企業が激増する

 実は日銀が量的緩和を終了できない理由はもう一つ、企業の側の事情もあります。

 長く続いたほぼゼロの低金利時代の間、低い金利で資金調達をすることでなんとかつぶれずに事業を継続している、いわゆる“ゾンビ企業”がたくさんあります。ゾンビと呼ばれるまでの状況ではないにしろ、金利が上昇するだけで利益がふっとんでしまう企業もたくさんあるでしょう。金利が上がると、日本経済は企業業績の側面でも破綻する可能性があるのです。

 本当はアベノミクスの異次元緩和で企業の業績が上がり、そのことで社員の給与も上がり、結果として年2%のインフレが起きて経済が拡大していくことが期待されていました。そうなれば、その後金利が上がっても誰も困りません。

 ところがアベノミクスは低金利によって結果として企業の業績は上げましたが、給与も実質賃金レベルではそれほど増えず、デフレ脱却も長らく実現できずにここまで来ています。そしてインフレはアベノミクスではなく海外の物価上昇が引き金で、ただ物の価格だけが上がる状況が起きてしまいました。

日銀新総裁が利上げに踏み切る可能性は
かなり低いのではないか

 結局のところ、アベノミクスは期待通りには良い方向には進まずに10年来てしまい、今、新しい日銀総裁には「23年4月以降の政策を考える」という新しいバトンが渡されようとしています。

 そこでもし異次元緩和の出口戦略として金利を戻そうとすれば、多くの国民が住宅ローンを払えなくなり、多くのゾンビ企業が破綻してしまう。そのことが実は人質になるために、私は国民が心配するような高金利政策を、日銀は取ることができないのではないかと考えるのです。

 結局のところ国民あっての日本政府です。読者の皆さんが心から心配するような悲惨な未来は、構造的に起きにくい。

 これは良い論理ではまったくないのですが、実際には黒田ショックで心配されるような住宅ローン金利の上昇は、国民が心配するがゆえに、それほどドラスチックな形では起きないと考えてよさそうなのです。

【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。
8段落目:実はその固定金利も10年ごとに見直しが入ります→実は私が選んだ固定金利には10年ごとに見直しが入ります
同:ですから、今後金利が上がれば→ですから私の場合は、今後金利が上がれば
同:固定金利の人でもまったく安心というわけではない→固定金利の人でも契約によってはまったく安心というわけではない
(2022年12月23日 14:14 ダイヤモンド編集部)