東急が減収で近鉄は売り上げ2.6倍、私鉄5社の間で業績格差が生じた複雑事情Photo:PIXTA

行動制限が解除され、入国制限も大きく緩和されるなど、人々の生活は少しずつ「コロナ前」に戻りつつある。だが、一難去ってまた一難。ビジネスの世界では、円安や資材高が多くの企業を混乱のうずに巻き込んでいる。その状況下で、好決算を記録した企業とそうでない企業の差は何だったのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は京王電鉄、東急、京王電鉄、小田急電鉄などの私鉄5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)

近鉄が2.6倍超の大増収
東急だけが減収

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の鉄道(私鉄)業界5社。対象期間は2022年5~9月期の四半期(5社の対象期間はいずれも22年7~9月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・小田急電鉄
 増収率:14.0%(四半期の営業収益985億円)
・京王電鉄
 増収率:13.2%(四半期の営業収益791億円)
・東急
 増収率:マイナス7.5%(四半期の営業収益2255億円)
・阪急阪神ホールディングス
 増収率:49.9%(四半期の営業収益2382億円)
・近鉄グループホールディングス
 増収率:161.4%(四半期の営業収益4359億円)

 行動制限の緩和によって鉄道需要も増え、鉄道業界各社の業績が回復基調にあり、私鉄5社中4社が大幅増収となった。同じ鉄道業界では、JR東海、JR東日本、JR西日本のJR3社も大幅に増収している。(本連載『JR東海・東日本・西日本が「3期ぶり黒字転換」も、コロナ前比の回復度は? 』参照)。

 JRと私鉄を合わせた鉄道業界全体の中でも圧倒的に増収率が高かったのが、近鉄グループホールディングスだ。営業収益は前年同期から2.6倍超に膨れ上がった。

 一方、唯一減収したのが東急だった。

 なぜこのように大幅増収となった企業がある一方で、減収した企業があるのか。次ページ以降では各社の増収率の推移を紹介するとともに、詳しく解説する。