「主に疑われる病気は、『レム睡眠行動障害』『睡眠時無呼吸症候群』『むずむず脚症候群』の三つです。寝相の悪さに加え、それぞれの特徴的な症状が認められると、可能性が高いと言えます。たとえば、殴る、蹴るなど隣で寝ている人や自分にけがをさせるほどの激しい寝相と、『コノヤロー!』『ふざけんな!』といった荒々しい口調の寝言や叫び声が確認されれば、『レム睡眠行動障害』が考えられます」

 なぜ、レム睡眠行動障害では暴力的な言動が出てしまうのか。阪野氏は「レム睡眠行動障害を患っていると誰かから危害をくわえられるような怖い夢を見やすく、夢の内容に体が反応してしまうから。そして、レム睡眠のときに、筋肉の緊張を緩める働きが妨げられているから」と説明する。

「レム睡眠行動障害の原因は、頭部の炎症性疾患、寝不足、交代制勤務などで定まらない睡眠リズム、アルコール、抗うつ薬の内服、ストレス、加齢の影響など、さまざまです。40代以降になると、認知症の前駆症状の場合も考えられます」

 レム睡眠行動障害は単体で発病することもあれば、『睡眠時無呼吸症候群』と合併して起きる人も少なくないという。

「寝相のほかに、いびきがうるさい場合は『睡眠時無呼吸症候群』の可能性が高いでしょう。就寝中の息苦しさから、寝相が悪くなってしまうのです。睡眠時無呼吸症候群を放置すると、心臓病、高血圧、脳卒中などのリスクが上がりますから、心当たりがあれば病院を受診してください」

メンタルの不調が出たら
なるべく早く病院へ

 三つ目の「むずむず脚症候群」は、寝る前から脚が“むずむず”するような違和感を覚え、寝ている間も脚の置き場がないように感じ、無意識に動かしたくなるという病気だ。鉄の欠乏により発症しやすく、鉄が不足しがちな女性に多いと言われています。加齢に伴って、40歳代から増加する傾向です」と、阪野氏。

 むずむず脚症候群は「周期性四肢運動障害」という睡眠障害を併発しやすい。周期性四肢運動障害も、寝ている最中に周期的に脚がビクっと動くなど、やはり睡眠を分断化する。

「病気ではないかと思うほど激しすぎる寝相から疑われる睡眠障害に限らず、睡眠障害はメンタル疾患と深い関わりがあります。怒りっぽい、やる気が出ない、うつっぽい、集中力や判断力が低下しているなど、日中の活動に影響が出るようなら、すぐに専門医に診てもらってください」