とはいえ、精神的な異変が生じるまで受診を控えたほうがいいというわけでもない。睡眠時無呼吸症候群を見過ごせば死に至る病を進行させかねないし、認知症の前兆として発症しているレム睡眠行動障害であれば早期発見ができるのに越したことはないからだ。

「睡眠時の行動・発言がおかしいかもしれないと感じた人は、パートナーに様子を確認してもらうなどし、客観視するといいです。他者に見てもらうのが難しい場合は、ビデオカメラで自分の寝ている姿を撮影してみたり、寝言やいびきを録音できるアプリを使ってみたりすると、手がかりがつかめます。こうした記録を外来に持ってこられる患者さんは多いですよ」

 もちろん、記録を確認しただけで病状を診断できるわけではないが、阪野氏は「睡眠障害で医師が参考にできる情報が増えるので、ぜひ受診の前にセルフチェックとして試してみてください」とアドバイスする。

「睡眠障害かと思うような異変はないけれど寝相がとても悪いという人は、最初にお話ししたように、睡眠環境の改善や、痛みやかゆみが出る体の病気の治療を行ってください。そうした要因もなく寝相が悪い人は、その人の“個性”として、ただ単に寝相が悪い場合が考えられます。レム睡眠行動障害のように、暴れて自分や他人を傷つけるということがなければ、寝相が悪くても問題ないでしょう」

 むしろ、「自分は寝相が悪すぎるかもしれない」と気にしすぎることがストレスとなり、睡眠の病気やメンタルの病気を引き起こしかねない。睡眠障害とメンタル疾患は双方向に関わっているので、「気にしすぎない」ことも、激しい寝相の改善方法と言えよう。

 睡眠中の動きや発言は、重大な病気のサインとなっている可能性もある。「たかが寝相」と見過ごさず、自分の眠りや、睡眠環境を、今一度見直してみてほしい。