ご主人が定年退職後の
家計はどうなる?

 お子さんへの金銭的な援助が減るため、ご主人が65歳で定年退職するまでの年間支出は従来より約15%減額の372万円とします。世帯年収は540万円なので、年間黒字額は168万円です。

 102万円の黒字が2年間、168万円の黒字が3年間続くため、5年間の合計で708万円の貯蓄を積み増すことができます。ご主人が60歳時点の金融資産額が3150万円なので、65歳時点では3858万円に増えているでしょう。

 ご主人が65歳で完全リタイアする頃、Zさんは53歳になっています。Zさんはパートまたはアルバイトにシフトして月5万円、年間60万円の収入を得るとします。

 ご主人の年金受給額(手取り)を月14万円、年間168万円とすれば、Zさんの収入と合わせた世帯年収は228万円です。

 ご主人のリタイアに合わせて、年間支出は62歳時点の372万円から約2割減額の300万円に抑えることにします。年間収入228万円、年間支出300万円なので、年間赤字額は72万円です。

 Zさんが年金を受給できる65歳まで働くとすれば、53歳からの12年間で864万円(72万円×12年間)の金融資産の取り崩しが生じます。

 ご主人が定年退職した時点の金融資産額である3858万円から864万円を取り崩すと2994万円です。これが、ご主人が77歳、Zさんが65歳時点での財産です。

 ここでZさんも、仕事をリタイアすることにします。Zさんが仕事復帰した後、どのような雇用形態で働くのかが未定であるため、明確な年金受給額を示すのは難しいところですが、Zさんの53歳以降の勤労収入(年間60万円)よりも増える可能性が高いでしょう。

 仮に同水準だったとしても、Zさんが65歳時点の金融資産額は2994万円なので、年間72万円の取り崩しを41.6年続けられます。

 人生100年時代に余裕で対応できるので、これからお仕事を3年間お休みしたとしても、家計は安泰といえるのではないでしょうか。

 Zさんの相談文には住宅ローンの完済年齢が書かれていませんでしたので、住宅ローンの完済年齢によっては貯蓄金額が増えることもあるでしょう。

 また、ご夫婦の退職金も考慮していないため、退職金が支給されれば家計の「安泰度」はさらに高くなります。

 最後に、もう一つだけアドバイスしておきます。今回は試算に織り込みませんでしたが、Zさんが退職している期間はiDeCoの所得控除が使えないため、積み立てを休止あるいは減額するとよいでしょう。

 現在は年間黒字額の大半を投資に回していますが、復職後は毎月の黒字額を投資7割、貯金3割程度に分散させると資金繰りが楽になると思われます。