「1on1」ミーティング。人材の育成や部下とのコミュニケーションを目的に、上司が部下と1対1で行う対話のことだ。ヤフーが2012年に導入したことが話題になり、今では多くの企業が取り入れている。しかし、「1on1はダメな方法」と指摘する人がいる。株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。一体、1on1の何が問題なのか。本記事では、安藤氏の著書『リーダーの仮面』の内容をもとに、1on1の問題点や、本来上司やリーダーが持つべき姿勢についてご紹介する。(構成:神代裕子)
「1on1」ミーティングをしてはいけない
いつ頃からだろうか。気がつけば、ビジネスパーソンから、「1on1」という言葉が頻繁に聞かれるようになった。
「1on1」とは、人事面談よりももっとフランクで、でも雑談よりはもう少し業務のことや部下の将来についての話をする場、といったところだろうか。
筆者も会社員時代、「部下と月に一度、30分程度の面談をするように」とお達しが出たことがあった。30分とは言え、複数人いる部下全員との時間を作るのに苦慮した記憶がある。
その割に、その面談で何か得たことがあったかと聞かれると、なんとも言えない。
「話の聞き出し方が下手だったのかな……」と反省していたこともあった。
しかし、本書の著者である安藤氏は「1on1は『位置』を間違えたダメな方法」と一刀両断する。
安藤氏の語る「位置を間違える」とは、一体どのような意味なのだろうか。
リーダーとメンバーの見ている景色は違う
安藤氏の言う「位置」とは、ピラミッド構造になっている企業において、その人が置かれている「ポジション」を指している。
そのポジションによって、見える景色は違う。
当然、トップにいる社長は遠くまで見渡せる一番高い位置にいる。だからこそ「高い位置にいる人は、未来を見据えて決断し、行動する責任を負う」と、安藤氏は語る。
これはリーダーであっても同じこと。リーダーはメンバーより高い位置にいる。同じ景色を見ていてはいけないのだ。だからこそ、「未来から逆算して考えるのが、リーダーの役割」という。
リーダーである以上、未来の利益を見据えた行動をとらなければならない。それが見える位置にいるのだから。
メンバーと同じ位置で、同じ感覚でいてはダメなのだ。
組織運営のコツは、上下関係を明確にすること
リーダーとしての「位置」を理解するのと同様に、部下にも「自分は今、どういう位置に身を置いているか」を正しく認識させることが大切である、と安藤氏は指摘する。
部下に、「リーダーから評価されている」と自覚させるための方法として、安藤氏が挙げているのが次の3つだ。
・上司からの指示は言い切り口調にすること
・締め切りを設定すること
・指示は『上から下』で、その後の報告は必ず『下から上』になるようにすること
「この仕事、お願いしていいかな?」と気を遣って仕事を「お願い」するのではなく、「この仕事を、いつの何時までに仕上げてください」と指示をし、決まった日時に部下から報告をさせる。
こうした位置関係を確立させることが、スムーズな組織運営につながるというのだ。
部下は「寄り添うこと」なんて求めていない
この「位置」の考え方を踏まえた上で見ると、確かに「1on1」は正しい「位置」を逸脱した形になる。
「1on1」は、上司の方から部下に「最近どう?」「困っていることはない?」とヒアリングをしていくものなので、「下から上への報告」という形が維持できないのだ。
気をつけたいのは、「リーダーの役割は、部下に寄り添うことではない」と理解しておくことだ。
あくまでも、リーダーの役割は「成果を出すこと」や「部下を成長させること」にある。
部下が自分の将来を思い悩んだり迷ったりすることに耳を傾けるよりも、「この業務をどのように遂行すれば、狙う結果が出せるか」に注力するべきなのだ。
部下だって、成果を上げればそのことが評価され、待遇にも跳ね返ってくる。上司が寄り添おうとしてくるよりも、よっぽどいいに違いない。
「リーダーの仮面」をかぶってマネジメントを
自分の感情にも、部下の感情にも振り回されず、「リーダーの仮面」をかぶって、淡々とマネジメントをすることをすすめる本書。
「1on1」のように寄り添うことを求められるマネジメントがいまいちうまくいかない方や、リーダーになったものの、何からしていいかわからない方にとって参考になるアドバイスが多数掲載されている。
「寄り添わないリーダー像」が気になる方には、ぜひ手にとってみてほしい。