雇用環境を中心に厳しさ増す中国経済

 足元、これまでに増して中国の実体経済は厳しい状況に直面している。要因の一つとして、人の移動が制限されたことによる経済的な負の影響は大きい。特に、雇用環境はかなり厳しい。報道によると22年、中国の都市部新規雇用は1206万人であり、政府によると目標は達成されたという。

 しかし、19年(コロナ禍が深刻化する以前)の同1352万人は下回っている。コロナ禍の発生は、共産党政権主導で産業を育てIT先端分野などで雇用を生み出し、国民の所得を増やす経済運営を行き詰まらせた。加えて、生産年齢人口の減少や、不動産バブル崩壊などの負の要素も重なった。それらの結果として、高度成長期は終焉を迎えつつある。

 23年の労働市場には過去最多となる1158万人の大学卒業者が供給されると予想されている。経済成長率の低下に伴い、雇用環境がさらに厳しさを増す可能性は高い。その状況下でゼロコロナ政策を続けていては、雇用を下支えしてきた中小企業への向かい風は強まるに違いない。特に、飲食や宿泊、交通などのサービス業の経営悪化は避けられない。中国全体で採用は手控えられ、コストカットのための人員削減に追い込まれる企業が増えるだろう。

 共産党政権は金融緩和などによって中小企業への資金繰り支援を強化している。しかし、新規の融資は予想されたほど増えていない。コロナ感染再拡大による防衛本能を背景に個人消費も停滞している。

 中国経済を取り巻く外部環境の不安定感も一段と高まっている。特に、FRBによる利上げによって米国の個人消費は徐々に減少している。22年の年末商戦では、多くの企業が夏頃から積み上げた在庫を圧縮するために値下げを余儀なくされた。

 米国の需要減少によって中国の輸出も減少傾向にある。中国の雇用創出力の低下、その後の内外需の縮小をベースに、16~24歳の若年層を中心に考えると、中国の雇用環境はデータ(22年11月で16~24歳の調査失業率は17.1%)が示す以上に厳しいと考えられる。それもあって、中国はゼロコロナ政策を続けられなくなったとみられる。