期待先行で上昇する中国の株価や世界の商品市況

 一方、世界の金融市場では短期的に中国経済は持ち直すとの期待が先行し始めた。23年1月中旬時点で、世界の株式市場では中国株の上昇が顕著だ。

 22年12月から23年1月中旬までの間、世界の株式市場はほぼ横ばいで推移した一方、香港のハンセン指数は16%程度上昇した。セクター別に見るとIT関連の銘柄は買われた。ゼロコロナ政策の終了によって春節(旧正月)連休中の移動者数は、22年から倍増の約21億人と予想されている。これにより中国の旅行関連銘柄の株価も押し上げられた。

 加えて、不動産バブル崩壊の大きな要因となったデベロッパー向け融資規制、「3つのレッドライン」が緩和されるといった観測もあり、今後の中国経済は持ち直しに向かうとの楽観が高まっている。

 商品市場では、銅や鉄鉱石などの価格が上昇した。共産党政権は経済対策のためにインフラ投資を増やすとみられ、それが銅線や粗鋼の需要を押し上げることになると読まれた。

 原油価格の上昇に対しても、中国の景気持ち直しへの期待感が与えた影響は大きい。そのため、ブラジル・レアル、チリ・ペソなどエネルギーや鉱山資源を多く保有する国の通貨も対ドルで反発した。

 また、主要投資家の中には、23年終盤にかけてFRBが利下げを実施する可能性を期待する者も増えている。それも、中国と関連性のあるリスク資産を購入する心理をサポートしているはずだ。

 経済成長に関しても、徐々にではあるが中国経済の持ち直しを予想する者が増えている。一例として、投資銀行のJPモルガンは23年の中国のGDP成長率予想を、4.3%から4.4%へ上方修正した。

 以前は、中国がゼロコロナ政策を終了するのは3月の「全国人民代表大会」(全人代)を控えた頃になるとの見方が多かった。しかし、ゼロコロナ政策は想定よりも早く終了した。それに伴い、これまで抑圧されてきた生産活動は徐々に回復し、物流も持ち直すとの見方が前倒しで増えている。そうした見方も、中国経済への期待を高め、株式などへの資金流入を支える要因になっている。