中国経済の先行きを楽観するのは尚早

 しかし、今後の中国経済はかなり不安定に推移するだろう。まず、春節中に移動が急増することによってコロナ感染再拡大が深刻化する恐れがある。1月14日、共産党政権は22年12月8日から1月12日までにコロナ感染者かつ医療機関で死亡した人が5万9938人と発表した(当初発表は38人だった)。医療体制はひっ迫し、解熱剤なども不足しているようだ。なお、中国は米国製ワクチンの受け入れに否定的である。感染再拡大の状況によって、個人消費などの持ち直しはかなり緩慢になるだろう。

 不動産分野などでの債務リスクも高まりそうだ。この問題は中国経済の構造的な問題と考えられる。今のところ、共産党政権は融資規制や金融緩和による債務の延命を優先しているようだ。となると短期的に、中国恒大集団など大手デベロッパーのデフォルトリスクは低下し不動産市況は下支えされる可能性はある。

 だが、金融緩和は不良債権問題の根本的解決策ではない。不良債権問題の深刻化を背景に不動産市況が悪化し、地方政府の財政状況も不安定化した。ローン支払いを拒否する家計も増えた。長期的に、「灰色のサイ」と呼ばれる債務問題はより深刻化するだろう。

 IT先端分野の統制は一段と強まりそうだ。共産党政権はIT大手アリババ傘下企業の「黄金株」(株主総会や取締役会で重要な議案を否決できる権利が付与された特別な株式)を取得したと報じられた。中国の金融大手アント・フィナンシャルではジャック・マー氏(アリババ創業者)が支配株主から外れた。テンセントに対しても政府が黄金株取得を目指しているとみられる。類似ケースは増えるだろう。

 共産党政権はSNS上での政府批判をさらに強く取り締まり、国内外でのマネーフローもより厳格に管理・監督すると予想される。中国のアニマルスピリットは低下し、人材の海外流出は増えるだろう。台湾問題や労働コスト上昇などを背景に、生産拠点を中国からインドなどに移す企業も増えている。中国経済の回復ペースはこれまで以上に緩慢になると予想される。