さらには香港で長い間、「リベラル紙」と形容されてきた「明報」までがその詳細を見極めないまま、「差別的な日韓の入国制限への中国の報復措置は合理的で適度なものである」とする社説を掲載している(但し、「明報」は1990年代からマレーシア系親中資本の所有となっており、特にその社説は中国政府の顔色を伺うものが多い)。こうした動きが中国国内に中国外交部の言い分を「筋の通ったもの」という印象を付けている。
一方で、昨年12月に同紙に10年あまり書き続けてきたコラムを中国政府の圧力で閉鎖された、台湾在住の香港人コラムニスト、曾志豪さんは、「中国国内の感染状況のひどさを懸念しているのは外国人ではない。中国国内のSNSで実際に多くの中国人が、葬儀場がいっぱいで、病院は大混乱で、周囲に感染者が激増していると訴えているじゃないか。(中国の外にいる)我々はそこから、中国国内の感染事情を理解しているだけだ」と反論してみせた。
中国政府も認める、国内の「ひどい感染」事情
韓国はまた、短期ビザ発給の一時停止とともに、中国からの入国者のうち31%が陽性だったことを措置の根拠に挙げている。また、日本でも中国が正式に自由な人員往来を再開する前の1月初めの時点で中国からの入国者の8%が陽性、また13日には4%だったことを明らかにしている。
中国が政策的に「コロナゼロ化」をやめて海外の往来を再開したことと、実際の感染率とは直接の関係性はない。またそれぞれの国が感染症に対して水際対策を取るのはそれこそ当然の「国内措置」であり、それを一方的に「中国人への差別」と言い放つのはかなり無理筋といえよう。
加えて、1月14日には中国政府は国内の対コロナ措置緩和(実質的にはすべての措置の撤廃)から約1カ月で5万9938人、つまり約6万人が新型コロナおよびその合併症で死亡したと発表。それまでほとんど公式には触れられてこなかった死亡者数が突然、万単位の数字で発表されたことに衝撃が走った。
だが、その一方で昨年12月25日に「全民PCR検査を停止したため、詳細な統計が取れなくなった」ことを理由にすべての数値発表をストップした政府がいかにして死者数を統計したのかも焦点となった。
経済メディア「財新網」では、今回発表されたのは病院での死亡者数の統計であり、医療が完備していない農村の死者や自宅で亡くなった人などは含まれておらず、さらに感染周期が2週間から時には8週間であることから、「12月末から地域別に次第に感染ピークを越えた」とする専門家の判断を踏まえると今後も死者数は増え続けるはずだ、としている。