したがってドイツでは、「環境保護はコストがかかるので、収益を圧迫する」と考えることはもはや時代遅れだ。むしろドイツをはじめとする先進国の多くの企業は、市民の高い環境マインドを利用して増収増益に結び付けようとしている。環境対策に力を入れていることをアピールして、競合他社に差をつけることも戦略の一つとなっているのだ。
グリーン・テックという強み
これまで見てきたように、ドイツでは政府も企業も「環境対策と経済成長は両立する」という考えの下に経済活動を計画したり、行ったりしている。そのベースにはドイツ人の環境意識の高さがあり、それを軽視した政策や企業活動をしていては、市民や投資家から支持が得られなくなる、ということが大きい。
さらにもう一つ理由がある。それは、彼らが気候変動や環境悪化を防ぐための技術、つまりグリーン・テックに力を入れているからだ。環境保護のための技術を外国にも売って、経済成長を図ろうというわけだ。たとえばこの国のスタートアップ企業には、環境保護やエネルギー、資源の節約に関する技術に特化している企業が多い。
ドイツ人たちは、グリーン・テックが21世紀の重要な輸出産業になると予想している。その理由は、多くの国々で、地球温暖化や気候変動に歯止めをかけるための努力、気候変動による悪影響を緩和するための取り組みが始まっているからだ。
ちなみにグリーン・テック、特に省エネ技術はドイツだけではなく日本にとっても得意分野であり、我が国の企業にとっても大きなビジネスチャンスを生む可能性がある。