予約が取れない人気店が
店舗数を増やさない理由

 類を見ない道を進み続ける同店では、「人気軸重視」という考え方が経営の指針となっている。

「人気軸重視とは、『お客様に必要とされる人気のある店をつくっていく』ということを第一に考えた経営軸です。一般の企業では、シェア拡大や店舗数増加に重きを置いていると思いますが、そういったスタイルは当店のセラピストたちの肌には合いませんでした。“日本で一番店舗数が多い店”より“日本で一番予約が取れない店”で働いているという自覚こそ、彼女たちの自信につながるのです」

 ストレスが少ないだけではなく、セラピストが誇りを持って働ける環境だからこそ、離職率の高いリラクゼーション業界においても勤続年数が長いスタッフが多いそうだ。

「“予約が取れない店”と聞くと自然とお客様の期待は膨らみます。熟練したセラピストであれば、その期待に応えることができ、結果的にお客様とセラピストの双方に満足してもらえるのです」

 予約が取れない人気店ながら店舗数をむやみに増やさないのも、“人気軸”を心がけた経営スタイルを意識しているからだ。かといって、席数が少ないために予約ができず、キャンセル待ちの人々があふれ返っているわけではない。むしろ、予約が可能な枠は増え続けているという。

「既存の店舗を拡大移転したり、増床したりして、ご案内できる席数は増やしています」

 店舗の拡大はしているが、店舗数は増やさない。このやり方も“人気軸”という考え方が基盤にある。

「ディズニーランドが全都道府県にあったとして、あそこまで人気を集めるでしょうか。私たちが目指すのは、1店1店を、お客様から『わざわざ行きたい』と思われて、かつそういった期待に応えられる満足度の高い“人気店”にすること。『人気軸重視は機会損失だ』というお声も耳に届きますが、当店はコロナ禍でも売り上げを落としていません。『悟空のきもちでなければ満足できない』と感じてくださるファンを増やしていく“人気軸重視”のビジネススタイルは、きちんと利益を生んでいるのです」

 2022年内をめどに、新体験ができるボディーリラクゼーションブランドの立ち上げも考えているという。さらには「睡眠用うどん」などのユニークな商品の開発も進められている。「悟空のきもち」が一過性のブームで終わらずに14年間も人気であり続けているのは、型にはまらないサービスを次々に生み出し、ブルーオーシャンを切り開き続けているからかもしれない。