最適な介護施設選び&老人ホームランキング #11Photo:kazuma seki/gettyimages

この数年、有料老人ホームの料金体系は実に多様になった。特集『最適な介護施設選び&老人ホームランキング』(全21回)の♯11では、料金体系の最新情報をお届けする。特に入居金の償却の仕組みは複雑で分かりにくく、知らないと損をすることがあるので、基礎知識は押さえておこう。(ダイヤモンド編集部)

「週刊ダイヤモンド」2022年10月29日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

入居金は初期償却率や償却期間に注意!
退去の際に戻るお金は大きく変わる

 有料老人ホーム特有の支払い方法である入居金は、2000年に介護保険制度が導入される前から、有料老人ホームの一般的な支払い方法として定着していた。

 今でも、身の回りのことを自分でできる人が対象で、入居期間が長い自立型のホームは、入居金方式が主流である。

 一定期間分の家賃の前払いとして、数百万~数千万円以上のお金を入居時に支払うことで、月々の支払いは安くなる。まとまった預貯金があって、月々の支払いを年金で済ませたい人などには好都合な支払い方法だ。

 ただし、「初期償却」といって、入居時にまとまった金額をホーム側が売り上げとして回収し、償却された金額は返金されない。

 例えば、入居金1000万円で、初期償却率30%、5年間均等償却ならば、ホーム側が入居時に300万円を取り、残り700万円を5年間かけて均等に売り上げとして計上していく。

 早く亡くなったり、急きょ、病院への転院を余儀なくされたりした人にとって、初期償却率が小さく償却期間が長いほど、返還されるお金は多くなる。逆に、初期償却率が大きく償却期間が短いほど、ホーム側の売り上げは上がる。

 入居金の償却を巡っては、遺族や退去者とホームの間でトラブルが続出したため、東京都は初期償却そのものを禁止している。しかし罰則はなく、評価の高い大手でも30%程度の初期償却率となっている。

 ただ、月払い方式との選択制を取っているホームも多い。月払い方式は、入居時に一時金を支払わない分、家賃相当分が上乗せされて月々の支払いは高くなる。

 よほど裕福な人を除いて、高額な入居金には自宅などを処分した資金や預貯金を充てているケースが多い。このため、お金に余裕がなければ、そのホームが嫌でも途中で退去するのが難しくなる。しかし、入居金がゼロの月払い方式ならば、気軽に退去できる。

 それでも、選択制の場合は入居金方式を選ぶ人の方が多い。長生きするなら、月々の支払いが少ない方が得になるからだ。ただ、病状が思わしくなかったり、超高齢だったりして、5年先は分からないというような人は月払い方式を選ぶケースが増えている。

 次ページでは、最近増えている年代別に入居金を変えるホームの狙いなどを解説していく。