【トレンド5】経営リーダーに対する需要がさらに高まる

 このように、とにかく各方面での変化対応に迫られ、会社組織は混乱する。そこで新しい知識や価値観を入れてどうにか良くしていかなければという意欲は高まる。ビジョンを打ち立て、競争戦略を明確にし、従業員を力強くモチベートできるリーダーが欲しいというのだ。どこそこの会社はうまくやっていると、成功している企業の幹部を引き抜く話が今まで以上に盛り上がることになる。経営人材の採用市場は今年も堅調となるだろう。

 とはいっても、経営リーダーの需要はあっても、供給は少ないのだ。因果を間違えてはいけない。多くの場合は優れた人物がその事業のリーダーであるからその事業が成功しているわけではなく、成功している企業にいるからその幹部が機能しているだけである。経営資源も企業文化も違う別の企業で活躍できるだけの破格の能力を持っている可能性のある経営リーダーがそれほどいるわけではない。採用しても一発一中とはいえないだろうから、成功するまではいろいろ試してみる必要がある。

 ただし、外部からの幹部招聘(しょうへい)はたとえうまくいかなかったとしても、外部の価値観や新しい技術や人脈を持ってきてくれるだけでも組織に大きな刺激を与えてくれるので、経営リーダーのスカウトには副次的な効果は高い。期待値を高く持ちすぎなければ、十分ペイするだろう。

 このような感じで、2023年度の会社の組織は大きく動くことになるだろう。なかでも一つ目の、“組織の求心力の復活を望む人”と“自分の仕事だけをしたい人”の対立は相当根深いものになる。前者はこれを“コロナの後遺症”と捉え、後者はこれを“環境変化による組織の進化”と捉える。私個人的には後者に肩入れしたいが、前者の懸念もわかる。両者の対立を超える均衡点を見つけるまでにはまだしばらく時間がかかるだろう。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)