今年の1月、全国どぶろく研究大会が北秋田市で開催された。同市はどぶろくの普及に熱心で、第三セクターのマタギの里観光開発が運営する打当温泉マタギの湯には、見学可のどぶろく工房を併設。宿泊客へ出すどぶろくは非加熱の生酒で、フレッシュでとろりと甘酸っぱく名物の熊鍋にも合うと評判だ。代表の仲澤弘昭さんは「どぶろくを宿の強みに」と願う。研究大会には21府県から82銘柄が集まり、淡麗と濃芳醇の2部門で審査が行われ、どぶろく工房は淡麗の部で優秀賞に。最優秀賞は高知県勢が占め、淡麗の部でトップのどぶろく工房香南の岡崎祝壽さんは、高知県濁酒研究会の会長も務める86歳。酒米土佐麗(とさうらら)を50%精米し、吟醸用酵母を用いて3段仕込みの大吟醸級で勝負を懸けた。「高知県工業技術センターの指導も仰ぎ、会員同士で情報交換した成果」と努力を語る。特区制定から21年、もろみを濾(こ)さない日本酒の原点どぶろくは、農業と醸造、地域の未来を背負って進化する。

新日本酒紀行「濁酒 マタギの夢」濁酒 マタギの夢
●打当温泉マタギの湯 どぶろく工房・秋田県北秋田市阿仁打当字仙北渡道上ミ67●代表銘柄:濁酒 マタギの夢●杜氏:佐藤美根子●主要な米の品種:あきたこまち
新日本酒紀行「濁酒 マタギの夢」秋田県阿仁地方はマタギの里で、宿は「マタギの生活を体験する」がテーマ Photo by Y.Y.