太田肇 著
かつての工業社会では業務の性質上、社員の保守的・消極的な姿勢が生産性に目立った悪影響を及ぼすことは少なかった。そればかりか、むしろミスを防ぎ、正確な仕事につながると前向きに評価される場合もあった。ところがデジタル化、グローバル化が進んだ1990年代あたりからは、定型業務が減る一方でイノベーションが成長のカギを握るようになった。そこでは保守的・消極的な姿勢はイノベーションの妨げとなりかねない。
1990年代以降、日本の労働生産性、国際競争力の先進国内での地位は急速に低下した。その後も低落傾向に歯止めがかからないのには、ここで述べたような構造的問題が少なからず関係しているといえよう。