この流れで、「福寿 純米酒 エコゼロ」も海外の他の有名アワードなどを受賞すれば、海外の日本酒人気はさらに盛り上がって、逆輸入的に日本国内でも話題になる。

 そうなると、日本酒だけではなく焼酎、和菓子、さらには伝統工芸品などに関わる人々は気付くはずだ。どうすれば自分たちの技術を後世に遺すことができるのか、を。

 このような産業を支えているのは、ほとんどが中小零細企業だ。だから、常識的に考えれば、カーボンニュートラルなど取り組む余裕はない。しかし、そんな“常識外れ”の戦い方をした方が、実は海外進出やブランド価値向上という生き残りの道なのだ。

「福寿 純米酒 エコゼロ」には、日本の伝統技術・伝統産業をどう守っていくのかというヒントが多く見つけられる。

「環境のことをやるともうからないとか否定的な声をよく聞きますが、私たちとしてはこれまでずっと、経済活動と環境価値というものの両立を目指し、実現化してきました。加えてその活動をさまざまな形で評価していただいています。今の時代、おいしくない日本酒などほとんどありません。どの銘柄もそれぞれのおいしさがある。だからこれからは環境負荷をかけずに、おいしいお酒を造るということを私たちの強みにしていきたいですね」(安福社長)

 二酸化炭素なんて減らしたところで、うちのような中小企業には何のメリットもないし、余裕もない――。そう考える経営者も多いだろうが、それは日本という「島国」に閉じこもっているからこその発想だ。

 中小企業だからこそ逆に、生き残るために世界へ飛び出す。中小企業だからこそ逆に、「カーボンゼロ」にも積極的に取り組む。そんな時代がもうそこまで来ているのかもしれない。