たとえば、サロンが1回目の施術料を11万8900円、2回目以降の料金を100円に設定していると、解約後の8回分の返金額はわずか800円になってしまうという。契約書にも料金に関する記載があるため、泣き寝入りする利用者もいるそうだ。
「これは“だまし討ち”に近いとても悪質な例です。ただ、利用者もしっかり内容を理解したうえで、契約をする必要はありますね。とくに脱毛のようなコンプレックスを刺激するサービスの契約は、トラブルにつながりやすいので、慎重に進めてください。また、強引な担当者に押し切られて高額なプランを契約してしまったら、8日以内に『クーリングオフ制度』を利用して解約しましょう」
脱毛する本人が注意するのはもちろんだが、脱毛に興味を持つ10代の子を持つ親は、我が子の行動もしっかりと観察してほしい、と山岸氏は語る。
「未成年が保護者の同意なく交わした契約は、クーリングオフ期間に限らず、未成年者本人、あるいは保護者などの法定代理人による“取り消し”ができます。しかし、2022年から成年年齢が18歳に引き下げられたので、高校生や19歳の若い人でも“成人”として契約を結べるようになりました。未熟な10代が契約トラブルに巻き込まれるリスクも指摘されているので、お子さんが何かしらのトラブルを抱えている場合は、弁護士に相談してください」
子どもが突然アルバイトを始めたり、お金が必要だと言い出したりした場合は要注意。そうした事態を避けるためにも、家庭でも“契約”についての教育を行う必要がありそうだ。
脱毛サロンを選ぶ上で
チェックすべきこととは
ユーザーの低年齢化や市場拡大に伴い増加している「脱毛サロントラブル」。山岸氏は、安さにとらわれずにメーカーの研修などを受けたサロンを選ぶのがポイントだと強調する。
「最近は、脱毛マシンのメーカー側もサロンの契約トラブルを減らすため、経営者向けの研修会を行っています。店舗を選ぶ際には、サロンのサイトやSNSに、使用している脱毛マシンの詳細や、メーカーの研修を受けている、あるいは民間の資格を持っているなどの情報を記載しているかどうか、チェックしたほうがよいでしょう」
ちなみに、美容皮膚科など医療機関による医療脱毛の広告は、さまざまな法律にのっとって公開しているため、脱毛サロンのような広告トラブルは起きにくいという。
いずれにせよ、脱毛ブームとともにトラブルが増えつづければ、市場の縮小にもつながりかねない。脱毛ビジネスに関わる人々それぞれが、業界の適正化を図る時期にきているのかもしれない。
山岸 純:早稲田大学法学部卒業後、2005年10月に弁護士登録。その後、企業や医療法人、社会福祉法人などの法律事務を担う。一般社団法人日本脱毛安全普及協会にて代表理事も兼任し、連射式脱毛器の安全普及とエステティシャンたちの技術向上にも尽力。