入院や検査にかかる医療費は
当面は公費負担が継続される

 そもそも感染症の分類はどのようになっているのだろうか。

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」では、その病原体の感染力の大きさや、感染による重篤性に応じて、国や自治体が必要な対策を取れるようにするために、それぞれを1~5類の感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に分類している。

 COVID-19は、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)というウイルスによる疾患で、その感染力の強さや死亡リスクの大きさから、国は2020年1月に「指定感染症」として対策を取ることを決定。「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある」との判断から、まん延を防ぐために、陽性者の全数把握、陽性者に対する入院の勧告・措置、感染拡大防止のための就労制限、建物への立ち入り制限、交通の制限など厳しい措置を行えるようにしたのだ。

 その後、長引くコロナ禍に対応するために、期限の定めなく、必要な対策が取れるようにするために、COVID-19は、21年2月から「新型インフルエンザ等感染症」に変更された。講じられる措置は、指定感染症と同様のものとなっている。

 まん延防止のためとはいえ、入院の勧告や隔離を行うことは、一時的にせよ個人の権利を制限することになる。そのため、感染症法の第37条では、自治体の勧告や措置による入院の場合、治療にかかった一連の費用(検査、診察、医薬品、医学的処置、入院費など)は、公費負担にすることを定めており、原則的に患者の自己負担はない。

 これが今後5類に移行するとどうなるのか。

 現在5類感染症に分類されているのは、季節性インフルエンザや麻しん、梅毒などだ。自治体による入院・隔離の勧告はなく、かかった医療費に対する公費負担もない。通常通り、健康保険を利用して受けることになるため、年齢や所得に応じて自己負担が発生する。

 医療費が高額になった場合は、高額療養費が適用されるので、際限なく医療費がかかるという心配はないものの、低所得層を中心に受診控えが起こり、重症化する人が増加することが懸念されている。

 そのため、1月27日に行われた厚生労働省の厚生科学審議会感染症部会では、COVID-19の患者への対応として、「外来・入院の自己負担分の公費支援については、影響を緩和するための措置により、段階的に移行していくべき」といった留意点を挙げている。

 また、同日に行われた内閣府の新型コロナウイルス感染症対策本部は、COVID-19の患者への対応として「急激な負担増が生じないよう、入院・外来の医療費の自己負担分に係る一定の公費支援について、期限を区切って継続する」と決定づけている(「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更等に関する対応方針について」より)。

 つまり、感染症法上は、COVID-19は5類感染症に移行するが、治療にかかった医療費については、5月7日以降も、当面の間、公費負担が継続され、自己負担なしで必要な医療を受けられる。

 無料措置がいつまで続くかなど、具体的な方針は、3月上旬をめどに、改めて示されることになっている。