新型コロナウイルス禍に円安、資源・原材料の高騰、半導体不足など、日本企業にいくつもの試練が今もなお襲いかかっている。その中で企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は富士通、NTTデータなど「ITベンダー」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
NTTデータは6割超の大増収
富士通は増収率1割に満たず
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のITベンダー業界4社。対象期間は22年8~12月の四半期(4社いずれも22年10~12月期)としている。
各社の増収率は、以下の通りだった。
・富士通
増収率:5.8%(四半期の売上収益9314億円)
・NTTデータ
増収率:62.7%(四半期の売上高1兆347億円)
・野村総合研究所
増収率:13.5%(四半期の売上収益1770億円)
・NEC
増収率:14.1%(四半期の売上収益8139億円)
ITベンダー4社は、いずれも前年同期比で増収となった。中でも、NTTデータの四半期増収率は6割超と突出している。
このNTTデータの大幅増収は、NTTグループにおける海外事業の再編によるところが大きい。
NTTグループでは22年10月1日付で、NTTデータの海外事業と、海外でデータセンターやネットワークを手掛けるNTT Limitedを事業統合。NTTデータの傘下に海外事業会社「NTT DATA」を新設し、その下にNTT Limitedを配置する新体制へと移行した。
今回分析対象とした22年10~12月期は、NTT Limitedをはじめとする複数の海外企業を傘下に収めたことによる新規連結効果が働き、大幅増収につながった。
一方で、残る3社の間では、野村総合研究所とNECが2桁増収だったのに対し、富士通は1桁台にとどまった。
これまで本連載では、四半期決算でNTTデータ・野村総合研究所が「勝ち組」、富士通とNECが「負け組」になるなど、業界内で明暗が分かれるケースが多いことを指摘してきた。だが今回は、増収率という数字の上では富士通と他の3社の間で差がつく構図となった。
富士通の増収率が伸び悩んだ要因は何か。NTTデータの海外事業を除いたセグメントは果たして好調なのか。次ページでは、この2社の動向を中心に、各社の増収率の推移について解説する。