三つのボディータイプで異なる
筋トレに効果的な食事法

 中高年の場合、生活習慣を整えるうえで重要な要素の一つが食事だ。フィンク氏は、「最近の研究では、テストステロン値が低いと食事で摂取したエネルギーを体の各臓器で消費する糖代謝の効率が悪くなることを示唆する結果が出ています」と話す。代謝機能が落ちている中高年は、若者と同じものを食べても効果的に栄養素を使えないのだ。

 また、筋トレに効果的な食事として、鶏むね肉やブロッコリーをたくさん食べてたんぱく質を多く摂取することが必要だと考えている人も多いかもしれない。実は、筋肥大に使えるたんぱく質を効率的に消費するには限界がある。「中高年の場合は、一度の食事でたんぱく質を代謝できる量は若者と比較してさらに少ない」とフィンク氏は語る。

「筋肥大に必要なたんぱく質の量は、自分の体重1kgに対して2gというのがベースの考えになります。たとえば、100kgの男性なら1日で200gのたんぱく質を摂取すべきです。ここで注意すべきなのは、人間が一度の食事で代謝できるたんぱく質の量は約20~30gである点です。この限界量は年齢が高くなるほど低く見積もる必要があるでしょう。一方で、10g以下のたんぱく質では筋肥大につながりません」

 つまり、中高年ほど効果的に筋肥大に運用できるたんぱく質の量が限られているので、計画的に食事の内容を考える必要があるということだ。また、たんぱく質以外の食事のバランスを考える時に、自分がどのような体形であるのかという点も考慮して、計画的に食事を取るべきだという。

「人間のボディータイプは3種類に大別できます。エクトモルフ(痩せ型)、エンドモルフ(肥満型)、メソモルフ(がっちり型)です。実際には、ほとんどの人がボディータイプのいずれかの間に分類されるでしょう。そのため、自身がもっとも近いと思うボディータイプをベースに、最適な食事量を調整していく必要があります」

3種類のボディータイプ3種類のボディータイプ。エクトモルフの人は、代謝が非常に早く炭水化物の摂取量を増やす必要がある。メソモルフの人は、筋肉が付きやすく脂肪は付きにくいので、たんぱく質も炭水化物もバランス良く取るとよい。エンドモルフの人は、炭水化物は最小限でたんぱく質の確保が必須となる 拡大画像表示

 体重・ボディータイプやトレーニング量を考慮して、食事を1日5、6回ほどに細かく分けて取ることをフィンク氏は推奨している。また、良質な脂質を取る必要性についても話してくれた。

「実はテストステロンの分泌にはコレステロールが必要になります。そのため筋肉を作るには、牛肉や卵に含まれる脂質も必要になってくるのです。脂質の中で唯一取る必要がないのは、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸です。魚やナッツ、アボカドなどを適度に取って、健康的なホルモンを分泌できる体に整えていきましょう」

 若いころと同じように筋トレを行っても、得られる効果は限りなく少ない。人生100年時代を楽しむためにも、計画的な筋トレと向き合ってみてはいかがだろうか。

フィンク・ジュリウス氏

1982年ドイツ生まれ。大学生の時に来日し、日本体育大学大学院で博士号取得。順天堂大学医学部泌尿器科学講座の非常勤助教。研究テーマは、男性の健康に対するテストステロンのさまざまな働き。とくに高齢者の血中テストステロンと、代謝、心臓、肝臓、骨、筋肉や脳神経との関係を中心に研究を行っている。現在はアメリカのノース・ジョージア大学准教授として、アメリカの最新のトレーニング方法、テストステロン補充療法、さらに男性のQOLの向上やアンチエイジングについて研究している。