「1日3食では、どうしても糖質オーバーになる」「やせるためには糖質制限が必要」…。しかし、本当にそうなのか? 自己流の糖質制限でかえって健康を害する人が増えている。若くて健康体の人であれば、糖質を気にしすぎる必要はない。むしろ健康のためには適度な脂肪が必要であるなど、健康の新常識を提案する『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』(萩原圭祐著、ダイヤモンド社)。同書から一部抜粋・加筆してお届けする本連載では、病気にならない、老けない、寿命を延ばす食事や生活習慣などについて、「ケトン食療法」の名医がわかりやすく解説する。

なぜ、健康のためには脂肪が必要なのか?Photo: Adobe Stock

そもそも、何のために糖質を減らすのか?

 糖質をとりすぎてはいけない……。最近は、当然のように、そう言われるようになってきました。

 ・私たちは普段の生活で糖質をとりすぎてしまっている
 ・1日3食では、どうしても糖質オーバーになる
 ・糖質は脂肪となるので、体脂肪率を下げる必要がある
 ・そのために私たちは糖質制限をしなければならない
 ・ダイエット以外にも、高齢者でも、あるいはがんの患者さんでも、糖質制限が求められる……

 そこでまず知っていただきたいのは、そもそも「糖質」とは何かということです。

 糖質とは、脂質・たんぱく質と並んで人間に必要なエネルギー産生栄要素(以前は三大栄養素とよんでいました)の一つである、「炭水化物」の一部です。

 炭水化物の多くは「糖質+食物繊維」から成り立っています。

 糖質はさらに細かく分類されますが、専門的になるので、詳しくは以下を参照してください。

糖質の種類について
糖質も正確には、いわゆる血糖値といわれるブドウ糖や果物由来の果糖の単糖類、ブドウ糖(グルコース)と果糖、その二つが結びついた砂糖の主成分であるショ糖、ブドウ糖が二つついた麦芽糖などの二糖類、デンプン、グリコーゲンなど単糖類が多数、グリコシド結合によってつながったものが多糖類になります。よくある糖質ゼロといわれている甘味料は、栄養になりにくい糖類を指しています。エリスリトールや還元麦芽糖がそれに当たります。でも、間違えてはいけないのは、栄養になりにくいですが、ある程度カロリーもあります。

 その糖質を多量に含む食べ物には、ご飯、パン、麺類、イモ類、根菜類、甘いお菓子、ビール、日本酒などがあります。

 つまり、私たちが日常的にとっている「美味しいもの」の多くには、糖質が豊富に含まれています。だから糖質制限をしようとすると、「ご飯(お米)はやめておこう」と主食の量が減ることになるわけです。

 確かに、体重が気になるときに、ご飯の量を減らせば、割と簡単に体重は減ります。でも、長い目で見たときに、その判断は果たして正解なのでしょうか?

1日3食でも、糖質オーバーにはならない

 たとえば、私たちは本当に糖質をとりすぎているのでしょうか?

 実は、答えはむしろ逆なのです。

 厚生労働省の報告によれば、高度経済成長の時期に摂取エネルギーは一時増えますが、その後は減少して、戦後すぐに80%近くを占めた炭水化物(糖質)は50%近くまで低下しています*。

*厚生労働省「日本人の栄養と健康の変遷」https://www.mhlw.go.jp/nutrition_policy/global/pdfs/changes_in_nutrition_and_health_jp.pdf

 1日3食でも、1食あたりお茶碗1杯程度のご飯なら糖質オーバーにはなりません。お茶碗1杯のご飯でお米150~200g、約50~70g程度の糖質になりますが、3回とっても糖質量は150~210gです。これは、男性成人の標準糖質量300~350gを全く超えていないのです。糖質オーバーになる要因は、みなさんもお気づきのように間食やデザート、おやつにあります。

 体内の余った糖質は脂肪(皮下脂肪、内臓脂肪など)として蓄積されますが、脂肪はそもそも生きるために必要なものなのです。

 脂肪は、私たちの体内で様々なよい働きをしてくれる「ケトン体」という物質をつくり出すために欠かせないものです。「脂肪=悪」というイメージは、本当のようなウソといえます。

 ですから、よほどのことがない限り、脂肪を減らそうとして無理に糖質を減らす必要はありません。

世界的に見ても、日本人の肥満率は低い

 そもそも、日本はBMI(ボディ・マス・インデックス:肥満度指数)30以上の肥満者が4・6%と先進国の中でも飛び抜けて少ないのです。

 かたやアメリカは42・8%という数字です。それなのに、これ以上、私たちはやせる必要があるのでしょうか。

 世界で行われている最新の研究結果や、私の研究室で行っている「がんケトン食療法」の研究結果から、健康の維持増進に必要なことは、ケトン体の働きを活性化させることであるとわかってきました。

 そもそも、何のために糖質を制限するのでしょうか? 私たちは、今一度考え直す時期に来ているのだと思います。

 もちろん、健康の状態を考えて、糖質を控えたほうがいい人たちもいます。それは、健康診断などでメタボリックシンドローム(代謝異常症候群)を指摘された人や、私の診療しているがんの患者さんなどです。

 ただし、がんの患者さんは糖質だけを制限しても、残念ながら効果はありません。後ほど説明するがんケトン食療法が必要になってきます。

 そういった意味において、そもそも健康な人が糖質制限をする必要はありません

 大切なことは、健康を維持増進するために適正な糖質量を摂取することです。本連載では、みなさんに、自然体で過ごせる健康生活を手に入れてもらうため、最新の医学研究の成果をお届けしていきます。

本原稿は、萩原圭祐著『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』からの抜粋です。
監修 大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座 特任教授・医学博士 萩原圭祐