関電が1200億円超の純損失…「カルテル課徴金」免除なのに払う中部電より大赤字の皮肉Photo:PIXTA

新型コロナウイルス禍に円安、資源・原材料の高騰、半導体不足など、日本企業にいくつもの試練が今もなお襲いかかっている。その中で企業によって業績の明暗が分かれているが、格差の要因は何なのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は東京電力ホールディングス、東京ガスなどの「電力/ガス」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

関電がカルテル課徴金免除でも純損失1200億円
課徴金払う中部電より大赤字

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の電力/ガス業界5社。対象期間は22年8~12月の四半期(5社いずれも22年10~12月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・東京電力ホールディングス
 増収率:55.3%(四半期の売上高2兆73億円)
・関西電力
 増収率:43.1%(四半期の売上高9889億円)
・中部電力
 増収率:55.3%(四半期の売上高1兆348億円)
・東京ガス
 増収率:75.0%(四半期の売上高9389億円)
・大阪ガス
 増収率:50.3%(四半期の売上高6150億円)

 電力/ガス業界の5社は、いずれも4割超~7割超の大幅増収となった。増収率の上では絶好調に見える各社だが、実はその多くが「正念場」といえる状況にある。

 これまで本連載で解説してきた通り、電力/ガス業界では現在、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で燃料・原料価格が高騰し、調達コストが急上昇中だ。

 各社は増加したコストを吸収するべく、燃料・原料価格の上昇分を電気・ガス料金に転嫁している。各社が大幅増収となった要因は、この値上げによるところが大きい。

 ただし、各社が使用している、燃料・原料費の変動分を料金に自動転嫁する制度(※)には、需要家保護の観点から上限額が定められている。燃料・原料費の増加が一定の水準に達すると、企業側はそれ以上、料金への上乗せができなくなり、差額を自社で負担する必要性が生じる。

※電力業界の燃料費調整制度、ガス業界の原料費調整制度

 この影響もあり、電力3社と大阪ガスは第3四半期(22年4~12月期)累計で最終赤字に陥っている。

 さらに、関西電力と中部電力は「カルテル事件」の真っただ中にある。両社と中国電力・九州電力が、電力販売を巡ってお互いの顧客獲得を制限するカルテルを結んでいたことが発覚し、電力業界を揺るがす事態となっているのだ。

 このうち関西電力は違反があった旨を公正取引委員会に最初に自主申告したため、独占禁止法のリーニエンシー(課徴金減免)制度によって、課徴金の支払いを免れたとみられる。一方、中部電力など3社は独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、公取委から課徴金納付を命じる処分案が通知された。

 だが、2社の利益面に目を向けると、意外な構図が見えてくる。課徴金の支払いを免除されたはずの関西電力は、第3四半期累計で2193億円の営業赤字、1244億円の最終赤字に沈んでいる。

 その半面、中部電力は第3四半期累計で483億円の営業黒字に転換し、最終損益は375億円の赤字だった。中部電力は公取委からの処分案を踏まえ、独占禁止法関連損失引当金繰入額として276億円の特別損失を計上したにもかかわらず、最終赤字の規模が関西電力の3分の1程度にとどまったのだ(2社の四半期売上高はともに約1兆円)。

 なぜ、こうした皮肉な状況が起きているのか。次ページでは各社の増収率の推移と合わせて、関西電力・中部電力の利益面について詳しく解説する。