仕事を通じて「できない自分」を受け入れられるようになった

――日本の会社は「実力勝負」というイメージとかけ離れた印象がありますが。

木下 結果論ですが、今働いている日本のIT企業のほうが、よほど“外資系らしい”容赦ない実力主義です(笑)

 私が担当する顧客企業は約200社。業種は不動産、建築、製造など多岐にわたり、規模も50~500人までとさまざまです。当然、商流も違えば業務上の課題も異なります。それらを個別に把握し、IT導入による適切な解決策を提案できる能力が求められます。

 そこにブランド力は関係ありませんし、頼れるバイヤーもいません。ロジカルに戦略を考えながら仕事を進めなければ、顧客対応は到底立ち行きません。賞与が完全な実力主義ですから、年収には毎年差が出ます。

――それは意外でした! 実力主義の会社はいかがですか。

木下 「戦略」が必要なことと、結果が「数字」で評価される点で、「自分にしかできない仕事をしている実感があります。過去の自分にできなかったことが少しずつできているのは、とてもうれしいです。

 仕事がうまく行かなかった時、これまでは「○○がないからやっぱりダメだった」という言い訳をしていましたが、今は「200%考えてやってダメだったから今回はいい、次は達成しよう」に変わったことに、自身の成長を感じています。

藤本 木下さんは自分の中で、「挑戦」「成長」「肯定」の実践を大事にしてきたことが分かります。その時々の自分の価値観を大切にし、自分が自分でいることにこだわってきたことがうかがえます。

 成長するための変化を求めて意思決定する際には、自分が何を大切にしてきたのか、過去を振り返って見直し、自分で決めて結果を出す。その成長のプロセスが、理想の自分に近づいていくバイタリティーにつながっています。同時に、これは自己肯定感を養うプロセスでもあります。

木下 前職の営業現場では、理不尽な罵倒を何度も受けました。「私はこんなにがんばっているのに、なんで認められないの!」という葛藤の日々です。ところが、いつの間にか、単に受け流せばいい時は簡単に頭が下げられるようになったんです。

 母との関係でもそうでしたが、「相手は自分を分かってくれる」と期待するから思い通りにならなかった時に傷付くのです。人から理解されない自分、仕事の目標を達成できない自分をそのまま受け入れることは、今はもう怖くありません。

 自己肯定感を上げていくには、自分自身が成長するしかないと思います。他の人と自分を比べるとか、他の人の物差しで自分を測るのではなく、今の自分は過去の自分と比較して、どれだけ成長しているのか。それだけだと思うのです。