給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

【株式投資必修講座 ステップ 7】投資タイミングを計るときに便利な、3つのツールとは?Photo: Adobe Stock

ローソク足と出来高

 株の売買タイミングを計るためには、株価チャートが参考になります。

 株価チャートというのは、次ページ下図のように株価の推移をグラフ化したものです。

 日本で一般的によく使われている株価チャートは下図のように、ローソク足チャートというものであり、それに、出来高(できだか)の棒グラフと移動平均線という補助線が添えられているものです。

 ローソク足は一定の期間の株価の動きを1本のローソクのような図形で表して、それを連ねたチャートです。上図の株価チャートは、1カ月間の株価の動きを1本のローソクで示しています。これを月足チャートといいます。

 上図にあるようにローソク足は、長方形の実体線(胴体部分)とその上下についているヒゲ(細い線)でできています。

 実体線の上辺と下辺がその期間の始値(はじめね)終値(おわりね)を示し、始値より終値が高い場合は実体線を白抜き(または赤)にして、これを陽線(ようせん)と呼び、始値より終値が値下がりした場合には黒塗り(または青)にしてこれを陰線(いんせん)と呼びます。上ヒゲの上の先端は高値、下ヒゲの下の先端は安値を示します。

 ローソク1本が1日の動きを示す日足(ひあし)、ローソク1本が1週間の動きを示す週足(しゅうあし)、ローソク1本が1カ月間の動きを示す月足(つきあし)などがよく使われます。証券会社などが提供するソフトでは、ローソク1本が5分や15分などの動きを示す分足(ふんあし)チャートも表示できます。

 また、ローソク足の下の棒グラフは、出来高の推移を示しています。出来高というのは取引高のことです。棒グラフが高くなると取引が活発になって出来高が膨らんでいることを示しますし、棒グラフが低くなると取引が低調になっていることを示します。

移動平均線は株価トレンドを示し、
押し目買いのメドにもなる

 移動平均線は一定期間の平均値を連ねたものであり、株価のトレンドを示すとともに、株価を買う水準・タイミングのメドにもなります。

 株価が上昇トレンドを続ける中で一時的に下落する場面を押し目(おしめ)といいますが、押し目での買いを狙う押し目買い(おしめがい)は、株式投資の定石の1つです。その場合、「株価がどこまで下がったら買っていいのか?」ということは、いつでも投資家の頭を悩ますテーマです。その際、買う水準・タイミングの1つのメドとして移動平均線が使われることが多いです。

 移動平均線はさまざまな期間のものを描くことができますが、長い期間の移動平均線は長い期間の株価トレンドを、短い期間の移動平均線は短い期間の株価トレンドを表します。

 上図に描かれている移動平均線は、24カ月移動平均線、60カ月移動平均線、120カ月移動平均線の3つです。いずれも月足チャートでよく使われる移動平均線です。

 24カ月移動平均線は、過去24カ月の平均値を連ねたものです。これは、今月を含めた過去24カ月間の月末の株価の平均値を計算して今月のところに記録し、それを連ねた線です。同様に、60カ月移動平均線は60カ月間の平均値を連ねて描いた線、120カ月移動平均線は120カ月の平均値を連ねた線です。

 ちなみに、会社四季報に掲載されている株価チャートも月足チャートであり、添えられている移動平均線は12カ月移動平均線と24カ月移動平均線です。

 これら月足チャートと月足の移動平均線は、数年から十数年という長期的な株価トレンドを示していて、数年に1度程度の買いチャンスを捉えるのに適しています。

 月足の移動平均線は、会社の将来性やPERなどと合わせて判断に使います。具体的には、

 ・その会社の業績、将来性などから考えて長期的な業績見通しが良く、株価の長期的な上昇トレンドが続くことが見込まれる
 ・PER(株価収益率)などから見て、株を買うのに魅力的な水準になってきたと判断できる

 ということを前提として、こうした移動平均線を押し目買いの目安として使うといいでしょう。

 ただし、「ズバリ、どの移動平均線をメドに買えばいいのか」ということになると、1本に絞るのは難しいです。その会社の月足チャートを見て、どの線の近辺で株価が下げ止まることが多いのかを考えたり、PERなども併せて総合的に判断するしかありません。

 それでも、株価は予想外に下ブレすることもありえますし、そうしたことも常に頭に入れて、できれば何回かにタイミングを分けて買うようにしましょう。

 月足チャートで考える際には、24カ月移動平均線が買いタイミングの最初の候補、次に60カ月移動平均線、そして、120カ月移動平均線が最終ラインというのが、1つの有力な考え方です。

 長期的に成長トレンドが続く株の場合、どんな危機的な状況になっても120カ月移動平均線くらいで下げ止まることが多いです。逆に、それでも下げ止まらない場合には、長期的な成長トレンドに異変が生じた可能性も考えるべきかもしれません。

 120カ月移動平均線については、チャートソフトによっては描けないものもあります。その場合は、100カ月移動平均線で代用しましょう。100カ月移動平均線の少し下あたりが120カ月移動平均線の水準だと考えられます。

 なお、数日から数週間の比較的短期の売買には日足チャート、数カ月程度のある程度ゆったりした売買には週足チャートが使われることが多いです。そして、日足では5日移動平均線、25日移動平均線などが使われることが多く、週足では13週移動平均線、26週移動平均線、52週移動平均線が使われることが多いです(下図)。

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/