「1→10」でもっとも重要なのは
「価値の再評価」

 世に生まれるプロダクトのほとんどは、この「1→10」の段階では売上を費用が上回る赤字状態ですが、「0→1」の「WHOとWHATの価値関係」から多くの潜在的なお客さま像を洞察し、お客さまの数を拡大することで、売上が費用を上回り利益が見込める収益性を確立していく時期ともいえます。

「1→10」の段階は、お客さまの数の増加に注目し一喜一憂しがちですが、大事なのは、プロダクトを実際に使用したお客さまの「価値の再評価」です。これがプロダクトの単価と購入頻度の向上を生みだし、収益性を左右します。

 どんなビジネスにおいても、最大の壁がプロダクトをはじめて使用した時点での価値の再評価であり、2回目の購入につながるかどうかです。

 2回目から3回目、3回目から4回目への継続率は初回から2回目に比べるとはるかに高くなるので、初回から2回目の購買への継続率がもっとも重要です。

 たとえば、ネットフリックスのような月額制の動画サービスで考えると、契約する時点では、そのサービスが提供するコンテンツは一部しかわかりませんが、契約して実際に使用しはじめると、自分の関心に合うコンテンツが多くあるかどうかで評価をします。自分の関心に合うコンテンツが少ないと判断すれば契約は解除されますし、たくさんあると判断すれば契約は継続されます。つまり、はじめての使用の時点で、どれだけ、その契約者の好みに合うコンテンツが豊富であるかを的確に伝えることが重要になるのです。

 さらに、初回から2回目ほどの壁ではないとしても、この「価値の再評価」は、永遠に続きます。競合や代替品の出現によって大きく左右されるので、プロダクトはお客さまが価値を見いだす便益と独自性を高め続けなければなりません。

 さきほどのネットフリックスの継続契約者であっても、ディズニー・チャンネルがそのお客さまにとって魅力的なコンテンツを投入すれば、ネットフリックスの相対的な価値は下がり、ディズニー・チャンネルへ移る可能性が高まります。便益と独自性は固定ではなく強化改善し続け、価値を高め続けることが重要であることも理解できるかと思います。