世界のAI企業で期待の星は?

 世界のIT先端分野ではサブスクリプションや広告などのビジネスモデルから、より急速にAI関連分野に関心がシフトしている。きっかけの一つが、マイクロソフトとオープンAIとの連携強化だ。

 従来のAI利用方法といえば、機器の使い方の説明やアラームの設定などがメインだった。しかし、言語型AIなどと呼ばれる「チャットGPT」は、自ら情報を生成する力を発揮し始めた。それを用いてマイクロソフトは検索市場のシェアを、王者・グーグルから奪取しようとしている。AIは既存の産業構造にかなりのインパクトを与えるとの見方は増えた。

 AI利用の範囲は検索にとどまらない。1月12日の米国株式市場では、企業、政府、安全保障関連で意思決定などをサポートするAI開発を行う企業であるビッグ・ベアAI(BigBear.ai Holdings,Inc)の株価が前営業日の引け値から260%(株価は3.6倍)超上昇した。材料視されたのは、同社が米空軍から数量未確定の契約を(期間10年、総額9億ドル、およそ1215億円)を結んだことだった。

 日常生活から企業の事業運営、社会インフラなどの管理、さらには防衛(安全保障)まで、AIが果たす役割は増えている。AI利用には、深層学習を支えるチップの性能向上が欠かせない。AI需要の増加期待を背景に、2023年初から3月初旬まで、米国の株式市場では、フィラデルフィア半導体株指数の上昇が顕著だった。

 中国でもAI関連企業が注目されている。代表例はファーウェイだ。米トランプ前政権下での半導体禁輸措置などによって一時、ファーウェイの経営体力は大きく低下した。そのため同社は「オナー」ブランドのスマホ事業を売却して生き残りを図りつつ、AI分野に経営資源を急速に再配分した。その成果として、世界の港湾別コンテナ取扱個数ランキングで上位の天津港で、ファーウェイのAIを用いた港湾の運行システムを稼働し始めた。

 中国では寒武紀科技(カンブリコン・テクノロジーズ)など、AI関連新興企業に対する成長期待も高まっている。習国家主席の肝いりで創設された「科創板市場」に上場するカンブリコンの株価は、3月上旬までの年初来で約70%上昇した。