老害か!?賢人か!? 独裁経営者・実名ランキング #8Photo:Howard Kingsnorth/gettyimages

上場企業は、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の中で、社長や会長などを退任した後に相談役や顧問に就いた者の情報を任意で開示している。ダイヤモンド編集部はその人数を集計し、各社の株価純資産倍率(PBR)と照らし合わせた。特集『老害か!?賢人か!? 独裁経営者・実名ランキング』(全8回)の最終回では、株価が低いにもかかわらず、顧問・相談役が大勢いる企業をランキング形式で明らかにする。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

院政の温床であり老害を生む
相談役・顧問制度を大調査

 2015年4月に不正会計が発覚し、今も経営の混乱が続く東芝。同社は03年、改正商法の施行後すぐに「委員会等設置会社」へ移行するなど、先進的なコーポレートガバナンス(企業統治)が行われている企業の代表格として知られていたが、今はその面影すらない。3月28日には、東芝と株主が当時の経営陣に対し損害賠償を求めた訴訟で、社長だった田中久雄氏ら5人の経営責任を認め、賠償を命じる判決が出た。

 なぜ東芝は、ガバナンス不全企業に成り下がってしまったのか。コンプライアンス(法令順守)意識の欠如など、これまで数々の要因が指摘されてきたが、その中の一つに相談役・顧問制度があった。

 不正会計発覚時、東芝には社長や会長などを退任した17人の長老が、相談役や顧問として会社に居座っていた。そして現役の経営陣に対して、大きな影響力を持っていた。

 その最たる例が、社長人事への介入だった。15年7月当時、田中社長と佐々木則夫副会長、西田厚聰相談役(故人)の歴代3社長が引責辞任。室町正志会長が社長を引き継ぐことが発表された。

 だが室町社長誕生の裏には、相談役だった西室泰三氏(故人)の暗躍があった。西室氏が、責任を取って辞めるつもりだった室町会長を引き留め、社長を引き受けるように説得したことを、西室氏本人が明かしたのだ。

 西室氏はあくまで元社長の相談役であり、経営責任がある立場ではない。当時は東芝と全く関係のない、日本郵政の社長だった。そんな人物が「人事権者」だったことに、東芝がガバナンス優良企業であると信じていた株主や社員、市場関係者たちは、膝から崩れ落ちる思いだっただろう。まさしく、「院政」が敷かれていたのだ。

 相談役・顧問制度は「院政」の温床となり、「老害」に結び付くリスクがあることを、東芝は身をもって証明した。そこでダイヤモンド編集部では、上場企業の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」で開示されている「代表取締役社長等を退任した相談役・顧問等」の人数を集計。人数が多い順にランキング形式でまとめた。

 その際、相談役や顧問が業績向上に寄与しているかどうかを考慮するために、株価純資産倍率(PBR)と照らし合わせた。すると、相談役・顧問の人数が多いにもかかわらず、株価が「上場を維持する価値なし」「会社を解散した方がまし」といわれる水準にある企業もあった。その企業の相談役や顧問は、株主から「会社にしがみつき、寄生している」と非難されても文句は言えない。

 次ページで株価水準を考慮した、相談役・顧問等の人数ランキングをお届けする。前述の通り、東芝は不正会計が発覚した当時、17人の相談役・顧問がいた。そこまでの人数には至らないが、いまだに10人以上を数える企業が数社あった。その社名と内訳、報酬の有無についても詳報していく。