「見た目は変で、しゃべりも下手、お笑い芸人としての才能もない」と思いこみ、コンプレックスのかたまりだったスリムクラブ・内間政成さんは、そんな自分を人に知られないように、自分の本心を隠し、見栄を張って、いつわりの人生を送ってきました。しかし、それはどうしようもなく苦しかった。自分で自分を否定しているようなものですから。
ある出来事をきっかけに、内間さんは自分自身と向き合い、自分という存在を少しずつ受け入れられるようになっていきます。その結果、何が起きたのか。今まで自分の欠点だと思い込んでいたことが、そうじゃないことがわかってきました。自分の欠点を「欠点だ」と決めつけているのは、他の誰でもない、自分自身だったのです。
「僕はカッコ悪い」「僕は人をイラつかせる」「僕は恐れ過ぎている」「僕はすぐ調子に乗る」「僕は怠け者」と、自分の欠点をさらけ出せるようになった内間さんはいま、ストレスフリーの時間を楽しそうに生きています。そんな内容の詰まった本が、内間政成さんの書籍等身大の僕で生きるしかないのでです。無理やり自分を大きく見せるのではなく、等身大の自分を受け入れれば、人生は好転する。そのためのヒントを本書からご紹介します。(撮影・榊智朗)

「コンプレックス」を武器に変える、たったひとつの考え方

自分の頭にコンプレックスを持っていたけど、今は愛されたり、自分の武器なんだと気づいた

 僕の顔は、男前とまではいかないですが、悪くはないと思っています。相方から「たまに朝、超男前だよな」と言われたこともあります。僕も感覚的にはそう思います。それは、恐らく睡眠が充分で湿度と気圧がマッチしたときなのでしょう。それと、支援者には「顔のパーツはいいんだけどな」とも言われたこともあります。僕も感覚的にはそう思います。ただ、器と盛り付けが合ってない気がします。大皿にカツ丼を盛り付けているような。

 パーツでの自慢は、パッチリお目々と鷲鼻です。僕のパーツを見て、誰かに似ていると思いませんか? また怒られると思いますが、それは、元AKB48の篠田麻里子さんです。僕がショートカットのカツラを被り、メイクをしたら彼女にそっくりなのです。以前、モノマネ番組で彼女のモノマネをしたら、僕のブログのコメント欄が大変なことになってしまいました。殆どの方の「真似しないで!」「ストレスたまる!」「謝れ!」とのクレームのコメントでした。でも、ある方だけは「オレは指名するかも」と称賛していました。

僕のコンプレックスが、ずる剥(む)け状態になった

 僕の顔は、小1までは丸顔でした。でもなぜか、小1から徐々に頭が伸びていったのです。具体的にいうと、耳から上がです。そのときくらいからです。自分の顔が好きではなくなっていったのは。毎日、鏡でチェックしていましたが、いつも、なんか、昨日より伸びている気がするのです。成長期だったのでしょうか。人間の体には全てに意味があり、何かから守るために発達する部分があると聞きますが、僕の頭部の伸びは、一体何から守るというのでしょうか。

 そんな悩みを抱えていたときに、体育の授業がありました。その授業で、僕は衝撃を受けました。それは、全員赤白帽を被るのですが、僕だけ被ってないのです。帽子はありますよ。それでも被ってないのです。それは、ちょこんと頭に乗っていたのです。頭部の長さのせいです。人間は、皆平等ではないのですか? その日から体育の授業では、一応帽子を被りますが、いや、乗せますが、帽子が苦手になりました。

 そんなコンプレックスを持った僕は、中1になっていました。僕の通っていた中学は、元々校則が丸刈り(中2からは長髪OKになる)だったので、嫌でも僕のコンプレックスが、ずる剥(む)け状態でした。解決策などありません。僕は、時が解決してくれると、根拠のない想いだけで生きるしかありませんでした。

 そんな中で参加した中2のバスケ部の地区大会。そのときは、校則も長髪を認められていましたが、バスケ部は、大会前には気合を入れるために丸刈りにしなければなりませんでした。それを見た万年丸刈りの野球部からは、「特権を自ら放棄している大馬鹿野郎ども」と罵られたものです。

 その大会で、僕が試合前のウォーミングアップをしていると、他校の女生徒が数名キャーキャーと騒ぎながら、僕をわざわざ見に来たのです。ファン!? ちなみにウチのチームは強く、僕も有名選手の1人でした。ドキドキしました。僕のプレーを見に来たのか? それとも僕自体を? どっちだろう? とソワソワしながら、普段はしないスリーポイントシュートを打っていると、1人の女生徒の声が聞こえてきました。「嘘ー! 本当だー! 似ている! トモゾウに!」と。それから、何度もハッキリと聞こえてきました。トモゾウ。友蔵とは、ちびまる子ちゃんのおじいちゃんのことです。76歳です。僕は14歳。友蔵は好きですけど、憧れてはいません。ただ、あまりにも行き過ぎた結果に、自分でもおかしくなり、笑えてきました。

自分の等身大以上の物を求めるから、コンプレックスを持ってしまう

 人はそれぞれ、自分の容姿にコンプレックスがあると思います。それは、自分しか分かりません。あんなイケメンが、そこを気にしているの!? と驚くこともしばしばです。それは、僕は、自分の等身大以上の物を求めるからだと思います。

 等身大以上とは、もはや自分自身ではありません。そして、等身大の自分の、自分なりの欠点から来る結果を、決め付けないことです。僕の場合は、自分の容姿が変で笑われたらどうしようと思っていました。つまり、「笑われた」とは、「馬鹿にされた」と思っていたのです。果たしてそうでしょうか? 僕もそうですが、人は面白いと思ったときに笑うものです。そこに、「馬鹿にされた」は微塵(みじん)も入りません。要するに、笑いを提供したのです。素晴らしいことではありませんか?

 僕は、芸人を始めてから、自分の顔で笑いを提供しているという想いが強くなりました。ある先輩が僕の顔を見て「騙(だま)し絵みたいやなー!」と言って笑いを取りました。そして、それをヒントに相方がネタで僕に、「あなた、顔、逆さですよね?」と言って笑いを取りました。何という僕の才能ではありませんか? 僕は、自分の顔は最強だと思っています。

内間さんは、もっと沖縄訛りで頭がトンガっているよ~!

 ある日、焼き鳥屋のカウンターで飲んでいると、隣で飲んでいたおばちゃんと話すことになりました。話していくと、どうやらスリムクラブのファンらしいです。僕は、心の中で「おばちゃん、あなたの好きなスリムクラブは目の前にいるよ~!」と思いながら、ここは本人登場で喜んでもらおうと、「実は僕、スリムクラブの内間なんです」と、告白してみました。すると、おばちゃんは笑いながら、「似ているけど全然違うね~!」と言ったのです。え!? どこが違うの!? 更におばちゃんは、「内間さんは、もっと沖縄訛りで頭がトンガっているよ~!」と陽気に言ってきたのです。

 はぁは~ん。恐らくキャップを被っているからだと思い、キャップを脱いでトンガっている頭を強調させてみると、おばちゃんは大笑いしながら「内間さんは、こんなもんじゃないよ~! もっとトンガっているよ~! あんた面白い子だね! 名前は何と言うの?」と、聞かれる始末でした。そのときもう僕は諦めて、「内間」だと名乗ると、おばちゃんは「あんたも内間と言うの!? 意外と内間って多いんだね~!」。その後、おばちゃんと仲良くなり、僕と「内間」の話題で盛り上がりました。

 まさか、そんな展開になるとは思いもしませんでした。でも、面白いじゃありませんか? それも僕の顔のおかげだと思います。そして、特権だと思いました。僕のように容姿に悩みを抱えている方に伝えたいことは、できる限り面白く捉えて生きてみませんか? ということです。でも、無理をして思考を変える必要なんて要りません。ただ、自分の容姿の好きなところを一つ見つけてみませんか? それができると、少しウキウキ気分になるでしょう。

 今でも僕は、トンガっている頭を完全に好きだとは言えません。でも、以前よりは気楽にディスプレイできるようになりました。

「コンプレックス」を武器に変える、たったひとつの考え方内間政成(うちま・まさなり)
芸人。スリムクラブ ツッコミ担当
1976年、沖縄県生まれ。2浪を経て、琉球大学文学部卒業。5~6回のコンビ解消を経て、2005年2月、真栄田賢(まえだ・けん)とスリムクラブ結成。「M-1グランプリ」は、2009年に初めて準決勝進出。2010年には決勝に進出し準優勝。これをきっかけに、人気と知名度が上昇。「THE MANZAI」でも決勝進出。2021年1月、「2020-2021ジャパンラグビートップリーグアンバサダー」に就任。