「子どもには、少しでも体によいものを食べさせたい!」ですよね。
でも、ごはんは毎日のこと。なるべくシンプルで簡単に済ませたいものです。
この連載では、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の小児科医でもある伊藤明子先生が、最新の医学データをもとに「子どもが食べるべきもの、避けるべきもの」をご紹介します。
不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験から、本当に子どもの体と脳によい食事がわかります。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。
亜鉛欠乏に加えて、ビタミンDの欠乏は皮膚トラブルのもとです
医師向けの「亜鉛欠乏症の診療指針」でも、診断基準の項で皮膚炎が最初に記されているほど、皮膚トラブルと亜鉛は密接な関連があります。皮膚の調子がなかなかよくならない場合は、亜鉛不足を疑ってみましょう。
また、ビタミンDのリセプター(細胞の表面にあるアンテナのようなもの)は、全身のほぼすべての細胞にあり、皮膚においてもビタミンDは必須の重要な栄養素だということがわかっています[*115]。
本来、私たち人間が必要とするビタミンDの8割近くは、日光を皮膚に直接浴びることで作られます。しかし現代人の多くは日光を避けて生活していますね。赤道よりも北(南半球の場合は南)に自分が位置していれば、それだけ浴びる紫外線が弱くなって、作られるビタミンDも少なくなります。日本の場合、静岡県より北に住んでいたら、太陽を浴びることで作られるビタミンDは不足していると考えてよさそうです。
爪がもろいのも、亜鉛とビタミンDの欠乏によることが多いです
爪がとてもやわらかくて破れるようにもろかったり、クニャクニャしたりしている場合も、亜鉛とビタミンDが不足していることが多いです。亜鉛とビタミンDを補って3か月ほどすると爪がしっかりと、前よりも固くなっていきます。
ビタミンDが不足・欠乏していると、ミネラルが体内でうまく活用されません。たとえば、カルシウムが足りていたとしても、ビタミンDが不足しているとそのカルシウムを活かすことができないのです。
イランの子どもたち300人以上を調べた研究では、ビタミンDが足りない子どもは亜鉛も足りないという、はっきりとした相関関係が見られました[*116]。
乾癬もビタミンDと関係があります
皮膚の病気に「乾癬(かんせん)」があります。この症状は皮膚の表面近くの角化細胞の層で異常に早い周期で細胞が増えてしまって、その結果皮膚が分厚く、ごつくなります。その後、すぐに剥がれて鱗のようになったり、フケのようになったりします。
これもビタミンDと密接な関連があるという研究が多くあります。ビタミンDは、内服するのがベストです。外用薬のビタミンD軟膏がありますが、日本で保険適用のビタミンD外用薬は「活性型」というもので、高カルシウム血症のけいれんなどの副作用が起きることがあるので注意が必要です。そのほか、ニキビがビタミンDと亜鉛に関連していることを示す研究文献がたくさんあります。
「すべてのお悩み解決策」とはいかないものの、ビタミンDと亜鉛のストライクゾーンはかなり広めのようです。また、目的が皮膚トラブルの解決だったとしても、ビタミンDを服用することで寝起きがよくなったり、気分が安定したりするなどのうれしいおまけもついてきます。
このほかにも『医師が教える 子どもの食事 50の基本』では、子どもの脳と体に最高の食べ方、最悪の食べ方をわかりやすく紹介しています。
(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本』から一部抜粋・編集したものです)
*116 Shams B, et al. The relationship of serum vitamin D and Zinc in a nationally representative sample of Iranian children and adolescents: The CASPIAN-III study. Med J Islam Repub Iran. 2016 Oct 18;30:430.