脳のイメージ写真はイメージです Photo:Gaspar Uhas on Unsplash

プレイステーションの父と呼ばれる久夛良木健氏は、近畿大学情報学部長として、いま、ITの世界の最先端でどんなことが起きているのかという特別講義を行っている。久夛良木氏も注目するのが、脳とコンピュータをつなぐ「ブレイン・コンピュータ・インターフェース」(BCI)の分野だ。この最新テクノロジーに対して、近大生が感じるのは、恐れか、それとも夢と希望か?

>>前編より続く

大学生がBCIに対して感じたのは、期待か不安か?

“プレステの父”が問う「脳とコンピュータをつなぐのは怖い?楽しそう?」くたらぎ・けん/近畿大学情報学部長。アセントロボティクスCEO。1950年東京生まれ。75年にソニー入社、情報処理研究所などを経て93年にソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)を設立。94年に初代プレイステーションを発表、99年SCE代表取締役社長。ソニー本体でも副社長兼COOを務めた後、07年に退任。近畿大学以外では電気通信大学特別客員教授、東京理科大学大学院上席特任教授などとして大学生に教えてきた。 写真提供=近畿大学情報学部

久夛良木:さて、ここまでいろいろ話してきたけれど、みんなの感想とか質問とかを聞いていこうかな。

学生4:一般人がこういう技術を実際に使うようになるのは、いつ頃でしょうか?

久夛良木:これは多分、どんなに楽観的に見てもまだ10年は来ないと思うよ。なぜかというと、やはり人体に影響があるものに対してはどうしても慎重にならないといけないから。でもそれとは別に、ALSとか、パーキンソン病とか、アルツハイマーとか、病気を治すというのは、限られたレギュレーションの中で実際に導入されはじめています。特定の医療目的に使われるのと、広く研究目的に使用されるケースとでは、別のレギュレーションで進むものと思ってください。ところで皆さんは、こういう技術に期待はある?

学生5:脳にコンピュータをつないでインターネットが使えるようになるとか、スマホを使わなくても、脳で考えるだけで直接映画とかそういう映像が見られるようになるっていうのは、すごく期待としてあります。でも、逆に、コンピュータにはコンピュータウイルスがありますよね。もし仮に、インターネット経由で脳をグチャグチャにするようなウイルスが入ってきたりしたらすごく怖いなって思いました。

久夛良木:それは怖いね。……このあいだ5回目のCOVID-19ワクチンを打ったんだけど、将来のワクチンって、コンピュータウイルスにも必要になるかもしれないね。話を聞いていて思ったけど、将来はメッセンジャーRNAワクチンのようなユニークな手法を使って、アンチブレインウイルスソフトなんていうのが出てくるかもしれない。コンピュータのアンチウイルスソフトみたいな。うん、いい気付きだな。他にあるかな?

学生6:やってみたいこととして……いま、映像や音はそのまま送れますよね。遠くにいても、見たり聞いたりできる。でも他の五感って、例えば嗅覚とか味覚とか触覚とかはそのまま送れないじゃないですか。でも、脳をつないだら、そういう感覚もインターネット経由で体験できたりしたら面白いなって思いました。

久夛良木:なるほど、それ面白い気付きだね。例えば超高級なレストランに実際行かなくても、ネットワーク経由で脳においしい刺激が送られてきて、グルメ体験ができるとか。食べ物だったら、匂いとか味とかの感覚を送れるようになるといいね。うん、それはあるな。ビジネスになるかもしれない。