職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
職場の中の「孤独感」
仕事中、落ち込んでしまうことはよくあります。
うまくいきそうな案件が失敗してしまったり、会議の場で上司からダメ出しを受けたり……。
特に新入社員やキャリアの浅い同僚は、うまくいかないことも多いでしょう。
これは、ある若手リーダーの話です。
役員も出席する会議で、彼は組織改善に関する提案をしました。
直属の上司にも事前に情報を共有し、つっこみどころがないように、根拠も十分に準備して臨みました。
ところが結果は、会議の参加者全員が「反対」でした。
その彼は、誰が見ても明らかにガックリと肩を落として、その場を後にしました。
その後、上司からのフィードバックもなかったようで、彼は職場の中で深い孤独感に苦しめられたと言います。
こうした話は、多くの職場で同じようなエピソードを聞きます。
そして、同じオフィスで仕事をしていれば、誰かが明らかに落ち込んでいる場面を目にすることもあるでしょう。
そんなとき、あなたならどんなことをするでしょうか。
先ほどの例で大切なのは、会議の後の上司からのフォローだと思わないでしょうか。
あるいは、同僚から何か声がけがあれば、彼の孤立した状態をなくせたかもしれません。
もちろん、プライドが高い人であれば、そっとしておくのも1つの優しさでしょう。
しかし、どこかのタイミングで適切な声がけがないと、やり切れない思いを抱えたまま、最終的には離職につながってしまうケースが多いのではないでしょうか。
「ちょっとした声がけ」が安心になる
声がけといっても、会議後に、
「5分いい?」
と聞いて様子をうかがってみるだけです。
上司であれば、フォローすることも業務の一部に入っているでしょう。
ただ、直属の上司でなくても、同じ職場で働く同僚なのであれば、おせっかいに思われてもフォローが必要なときはあると思います。
もし、そこで「今ちょっと忙しいので……」「私なら大丈夫ですよ」と断られたのなら、そっとしておくべきなのかもしれません。
あなた自身が心の壁を越えたのなら、あとは相手の心の壁の問題です。
「いつでも声をかけて」とだけ残して立ち去ればいいのです。
ちゃんと相手の様子を見て、「心配している」ということが伝われば、それは安心感につながるでしょう。
そのための気づかいを、躊躇しないようにしてみてください。
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。