「友だちを減らせば時間資源が増える」

 稲田さんによると、若者たちが映画を早送りしてまでタイパを最大化しようとするのは、「友だちとの会話についていくため」だ。音楽、アニメ、ドラマなどには旬があり、SNSなどで勧められたコンテンツに素早く反応しないと、場が白けてしまう。

 だとすれば、そもそも友人がいなければこんなことをする理由もないのではないだろうか。

 ここからもうひとつ、重要なことがわかる。

 人間関係には大きなコストがかかる

 いまの若者は、友だち関係を維持するために膨大な時間資源を消費し、それでも時間が足りなくなって動画を早送りしたり、飛ばしたりしている。だがこれは、逆にいうと、「友だちを減らせば大量の時間資源(リターン)が生まれる」ということでもある。だったらなぜ、そうしないのか?

橘玲(たちばな・あきら)
作家
2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ヒット。著書に『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)、『幸福の「資本」論 -あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」』(ダイヤモンド社刊)、『橘玲の中国私論』の改訂文庫本『言ってはいけない中国の真実』(新潮文庫)など。最新刊は『シンプルで合理的な人生設計』(ダイヤモンド社)。毎週木曜日にメルマガ「世の中の仕組みと人生のデザイン」を配信。