合併会社を設立して
合法的に情報を流出
もちろん、中国共産党の指揮命令下にある中国人技術者が当初からその身分を隠して企業に入社する場合もある。
さらに、公安調査庁のHPにも掲載されているが、合法的な経済活動による技術流出も当然存在する。
例えば、合弁会社の設立である。
中国企業との合弁では、日本企業が最新の技術は合弁先に共有しないという立場を取る場合が多い。
しかし、日本企業のガバナンスが弱いため、現地への技術指導を目的に日本人社員が機微情報(図面等)を持ち出してしまい、その結果、現地に技術情報が共有されてしまい、合弁解消後も技術情報は現地に残ったままという事例もある。
米国が世界に警鐘を鳴らしているように、中国による諜報活動・技術流出は違法な手法のみではない。
中国の千粒の砂戦略(※1)を例に、悪意・善意問わずビジネスパーソンや留学生が日本で知見を蓄えて帰国する手法(こうした人々は「海亀族」といわれる)や、調達などの合法的な経済活動によって、日本の知的財産が侵食されている点には極めて留意しなければならない。
また、中国に進出する企業では、中国国産化政策(現地設計・現地生産が求められ、拒否すれば市場から締め出されるような政策)や在中国欧州商工会議所が2021年1月に公表した報告書が示している半強制的な技術移転に留意しなければならない。
※1 千粒の砂戦略:ロシアのようにスパイによる典型的な諜報活動ではなく、人海戦術のごとく、ビジネスパーソン・留学生・研究者など多種多様なチャネルを使用し、情報を砂浜の砂をかき集めるように、情報が断片的であろうとも広大に収集する戦略。