経済安全保障における
スパイ防止法の必要性
経済安全保障という言葉がトレンドになって以降、中国による技術窃取の問題がクローズアップされてきた。日本においても、これまでも存在していたリスクが正しく捉えられ始め、社会の認知は広まってきたといえる。
一方で、前述のように事件化や表面化した諜報事件・技術流出事件は、ほんの氷山の一角であると断言できる。
このような極めて厳しい状況下にもかかわらず、我が国にはスパイ防止法がなく、スパイ活動を取り締まる法的根拠がないため、捜査機関としては、法定刑がさほど重くない窃盗として、もしくは不正競争防止法等の適用を駆使しながら何とか対応している。
そこで、検討されるべきが、スパイ防止法である。
スパイ防止法は、中国の反スパイ法を反面教師に、その定義が決して曖昧であってはならず、恣意的な運用の余地を一切なくさなければならない。
また、日本弁護士連合会による1985年の「『国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案』に反対する決議」(LINK)にもあるように、スパイ行為自体が、日々の生活に非常に密接であり、スパイ行為の処罰が基本的人権を侵害する恐れもあるため、法案内容の検討には十分かつ慎重な議論がなされる必要がある。
しかし、現在、世界は変動期にある。今一度、日本のカウンターインテリジェンス(防諜活動)を考え、スパイ防止法の本格的な検討をするときが来たのではないだろか。
(日本カウンターインテリジェンス協会代表理事 稲村 悠)