M3はBMWのこだわりと情熱がぎっしり詰まった
最高のドライバーズカー
先代M3の足回りは全般的に突っ張るような傾向が見られた。うねった路面ではグリップレベルが断続的に変化し、ステアリングが左右にとられる印象があった。ところが新型は、まったく異なる。凸凹路面に対してもタイヤがしなやかに追従。グリップレベルが大幅に安定したうえに、ステアリングがとられる挙動はほぼなくなった。さらに先代はブレーキを残したままコーナーに進入するトレーリングブレーキを使うと、ブレーキをリリースした際に挙動が不安定になる傾向が散見された。新型ではこの弱点も解消。おかげで、コーナーの進入から出口まで、ステアリングの舵角を一定に保ったままクリアできるシーンが格段に増えた。
最新M3は、コーナリング時にマージンを見積もる必要がない。タイヤのグリップ限界まで積極的に攻められるようになったのである。私は、これこそがスポーツドライビングの本来あるべき姿だと受け止めている。しかも、DSC(スタビリティコントロール)をオフにしてMトラクションコントロールを調節すると、“M”の文法どおり、オーバーステアを引き出すことも可能。この辺の味付けは見事としかいいようがない。
もちろんストレート6は恐ろしく滑らかでありながら独特の鼓動が感じられる絶妙の設定。ここに適度なメカニカルノイズも加わってドライバーを官能の世界へと誘う。
M3はBMWのこだわりと情熱がぎっしり詰まった最高のドライバーズカーである。
(CAR and DRIVER編集部 報告/大谷達也 写真/小久保昭彦)