バフェット氏がアマゾン株を巡って
「後悔」したこととは
その文脈で、バフェット氏が「失敗だった」と振り返るのがアマゾン株です。バフェット氏がアマゾンの株主になったのは2019年と、バフェット氏としてはかなり出遅れての投資でした。アマゾンというブランドは間違いなくバフェット氏の投資基準に合致する、誰もが知っているブランドであり、20年後も誰もが使っていると想像できるブランドです。
ところが投資先として考えると、実は「よく知らない」ことがたくさんあります。アマゾンの収益の柱には、インターネット通販以外にAWSというクラウドビジネスがあります。これが非常に成長しているのですが、なぜインターネット通販以上に成長するのかがネットに通じていないとよくわからない。さらにAIがそこに加わるのですが、そうなるともっとよくわからない。
ここで安易に「よくわからなかった」という言葉を使うと、バフェット氏を過小評価することになります。当たり前ですが、クラウドやAIの成長の意味についてはバフェット氏は私などよりもはるかに深く理解をしています。
バフェット氏が「よくわからない」という場合は、コカ・コーラのように成長し続けるか、それともある日、思いもよらぬ競合の出現でやられてしまうのか「確信が持てない」というものです。
その確信が持てなかったため、「ずっとファンだった」にもかかわらずアマゾン株を買うタイミングを失っていた。そのことをバフェット氏は、「買わなかったのは愚かだった」と2019年に振り返ったわけです。
そして愚かだったのは、バフェット氏以上に私たち日本人かもしれません。家の中にはアマゾンの空の段ボール箱がうじゃうじゃしていて、毎日のようにアマゾンを使っているのに、アマゾンの株主になろうと発想していなかった。
実はリーマン・ショックの直後、アマゾン株は1株3.25ドルで買えました(注:その後の株式分割を織り込んで説明しています)。それが今は、1株100ドルです。
もしその頃にアマゾン株を325万円買ってバフェット氏が指南するように持ち続けていたとしたら、今ごろそれは1億円です。そうなっていたら老後資金の問題も、会社でのパワハラに耐える必要も、値上げのたびに感じる不安もみんな吹き飛んでいたはずです。
大半の日本人は、そんなチャンスがあるとは思わないで大切なお金は銀行に預金しています。ちょっと目端が利く日本人はアマゾン株を買うのですが、それが3倍になったら喜んで売ってしまいます。だからバフェット氏のような富豪にはなれない。
ここが、バフェット氏が投資の神様と呼ばれるゆえんであり、世界中の投資家がバフェット流に憧れるポイントでもあるのです。