5大商社のビジネスは
アメリカ流の投資ビジネスとはひと味違う
たとえば、三菱商事の投資先にカンロというあめの会社があります。誰でも知っているブランドである一方で、業界のことを知らない一般の人は「衰退しそうな零細企業じゃないか」と考えがちです。でも実態はその逆で、カンロは成長企業です。秘密は三菱商事出身の社長にあります。
プロパー社員と対話をしながらグミが成長市場であることを理解し、そこに集中して投資を行う。SNSが成長の鍵であることを理解して、若手社員にそこを任せる。成熟分野でも人が関わると企業は殻を破って成長できるものであり、そこを信じて、総合商社は金だけではなく人をセットに投資を考えるのです。
そのような投資対象が成長していくと、伊藤忠の投資したファミリーマートのようなビジネス経済圏が生まれます。伊藤忠がコンビニ業界2位のファミマの株主であることはよく知られていますが、実はファミリーマートに金と人を投資するだけではなく、ファミマの成長と連動する形で周辺の関連企業にも金と人の投資を行っています。
たとえばファミチキに関しては伊藤忠の畜産部が関わり、川上の鶏肉事業会社にも投資を行います。ファミマカフェへのコーヒー豆、砂糖、乳製品の調達にも伊藤忠が関わり、やはり川上の海外のコーヒー企業などに出資していきます。コンビニの人気商品であるおにぎりやお弁当、麺類などの原材料調達も伊藤忠の子会社が行うなど、コンビニという事業の周辺に無限の投資機会を生んでいるのです。
ここは推測ですが、おそらくバフェット氏は日本に来て総合商社のビジネスを勉強した結果、総合商社はバフェット氏の運用会社であるバークシャー・ハサウェイがやっていることと同じことを、ずっと先進的にやっていることを理解したのではないでしょうか。
ひとことで言うと、アメリカ流の投資ビジネスに「人」の要素をたっぷり加えて成功確率を上げている。
そのことを理解するとともに、それほど素晴らしい会社の株式が割安で取引されていることに気づいた。だからここまで保有比率を上げたにもかかわらず、「さらに投資をする」と宣言したのでしょう。
そして「ビジネスや人々を探している」と語ったように、新たな投資先企業に加えてバフェット氏は日本人にも興味を持っているようです。このあたり商社への投資の成功体験からもっとその先に関心を持つようになったのではないでしょうか。
日本経済はまだまだ厳しい状況にあるわけですが、その中でも世界的に評価される企業があり、その根っこの部分に日本人ビジネスパーソンの強さがある。
今回のニュースは、わたしたち日本人に自信を与えるニュースだったのだと思います。